最近、下のような記事を発見しました。今回はこれに関して、発達障害・グレーゾーンの子どもたちの学校選びについてご紹介します。
【記事】「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」の情報提供を開始
株式会社AXTが運営する発達障害・グレーゾーン専門の学習塾「個別指導のコーチング1」は2022年2月より「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」の情報提供を開始した。同社は2020年より全国で発達障害・グレーゾーン児童向けの中学受験・高校受験対策を実施しており、その中で各都道府県の発達障害・グレーゾーン児童に理解がある学校情報を蓄積してきた。これらの情報を中学受験・高校受験における進路選択に有効活用してほしいとの思いから、今回「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」を提供するに至った。(元記事)
残念ながら、記事に紹介されているリンクからHPにアクセスしても「要問い合わせ」となっていて、今のところは使い物になりません。そこで、学校に勤めるものとして学校の受け入れ態勢についてご紹介します。
また、この記事でよく出てくる「合理的配慮」という言葉について先に補足しておきます。
ほとんどの私立学校が受け入れ可能
多くの私立学校で発達障害・グレーゾーンの生徒を受け入れています。というのも、多くな場合は学校に知らされずに入学してきていますし、「あっこの子発達障害があるかもしれないな。」と教員が気づくパターンも多いです。そういう生徒は結構多く、受け入れる・受け入れない以前に、日常の学校生活の中に溶け込んでいます。そのため、受け入れ可能かを心配する必要はほとんどありません。
そして、学校にはカウンセラーがいますので、その手の相談にものってもらえます。基本的なことについては問題ないと見て良いでしょう。
学校によってはクラスの30%ほどがそういう生徒という学校もあります。ほぼ全入に近い私立学校ではよくある光景です。
なぜ、発達障害・グレーゾーンの子どもたちに私立学校が選ばれるのか?
では、なぜ発達障害・グレーゾーンの子どもたちに私立学校が選ばれているのでしょうか。それは公立の小学校や中学校での経験から、公立の中学校や高校に期待が持てなかったり、いじめなどを経験し、私立学校に移って心機一転したいというのがあるのでしょう。実際、そういう動機の生徒を多く見てきました。
特に私立中学では人間関係によるものが多く、人間関係のリセットのためによく私立学校が選ばれます。
また、親や本人の世間体も影響します。支援学校に進学することに抵抗感のある家庭は非常に多く、「支援はしてもらいたいが支援学校はちょっと…。」という家庭に、「高い学費を払っているのだからこっちの要望を聞けよ。」と私立学校は選ばれやすい傾向にあります。
入試は突破しなければならない
私立学校の場合、中学・高校ともに入試が実施されています。どれだけ受け入れ態勢があるとは言え、入試を突破しなければなりません。しかし逆を言えば、学力面で合格ラインさえ突破できれば問題ありません。そこはフェアに見られています。
気をつけたいのは面接です。私立学校の入試では面接を課す学校もあります。面接は足切りに使われやすく、ほとんどの場合は面接で不合格となることは少ないのですが、面接の様子が極端に悪いと不合格とされてしまいます。この点はしっかりと対策した方が良いですね。
また「障害があるから配慮してくれ!」という要望を出すことはできますが、あくまで入試でフェアに行わなければならないので、加点や面接免除などの配慮は難しいです。できたとして、他の受験生に対して有利にならない範囲での配慮になります。
経営が厳しい定員割れしているような学校でしたら難なく突破できますので、不安があるならそういう学校を選択肢に入れると良いでしょう。
特別な対応を期待してはいけない
入学できたからと言って、「合理的配慮」の範疇を超えるような特別な対応を期待してはいけません。また、合理的配慮といっても学校によって状況は様々ですので、その内容は学校によって様々です。「あの学校はここまでやってもらえたのに、この学校はやってもらえない!」ということはありえます。
あくまで一般校ですので、他の生徒と同じような内容のことを学び、他の生徒と同じような学校生活を送ります。これを受け入れられないようであれば、別の選択肢を取らなければなりません。
特別支援学校ではダメなのか?
現状、公立の一般校や私立学校では「合理的配慮」内での支援はできるのですが、さらに踏み込んだ個別の特別な配慮は難しいと言えます。
「うちの子は発達障害なんだ!特別な対応をして欲しい!」そう思うなら、特別支援学校が有力な選択肢です。
私自身、支援学校での勤務歴もありますが、支援学校は個別の配慮ができる環境にあります。支援学校では学級内の生徒数が少なく、さらには生徒数に対する教員数も多いので、生徒一人一人に目が届きやすいと言えましょう。また、個別の支援計画が作成されるなどそれぞれの生徒にとって最良の教育が考えられ、それが授業などに反映されています。
ただ、支援学校に入学するには条件があります。この条件を突破できないと他の選択肢を探すことになるのですが、そんなときは面倒見が良い私立学校を候補に入れてもいいかもしれませんね。
どんな私立学校がオススメか
では、どのような私立学校がオススメかをご紹介しましょう。
1学級の人数が少ない
私立の支援学校も存在しますが、ほとんどの私立学校は一般校で1クラスに複数の生徒を入れて、それを1人の教員で指導することになります。そうなるともちろん目が行き届かない、対応が追いつかない場面も出てきます。
そこで注目なのが少人数制のクラス編成をしている学校です。多くの学校が1クラス40人の人数設定をしているのに対し、それより少ない人数を設定しているところは目が行き届きやすい状況にあります。現役教員の経験から30人未満のクラスだとかなり教員にゆとりが生まれますので、30人以下学級を売りにしているところが狙い目です。
問題はそんな学校はほとんどないということと、あっても難関大学を目指すような特別なコースにしか少人数制を設けていないということです。支援を目標に少人数設定しているところは稀で、定員割れなど学校が意図せずに少人数になるというケースの方が多いかもしれません。
経営破綻スレスレの学校は生徒数は少ないかもしれませんが、教員の質まで破綻しているわけではありませんよ!そういう意味では狙い目なのかもしれません。
高校・大学への進学がほぼ保証されている
勉強面の不安を少しでも軽減したいなら、高校・大学への進学がほぼ約束されているような私立学校がオススメです。具体的には、進学条件の緩い大学の付属校ですね。
大学の付属校・中高一貫校だからといって、進学の心配が全くないわけではありません。学校によっては進学基準が決められていて、成績によってふるい落とされたりします。学校の進学基準についてはしっかりと確認し、普通に勉強していれば大丈夫な(元気に出席し、勉強面の足切りはほぼ無い)学校を選ぶと良いでしょう。
教員が暇そうにしている
これも結構重要です。教員が忙しそうに働いている学校というのは、生徒にかける時間が少ない学校と見ることができます。教員が暇そうにしているのは、教員にゆとりがある良い証拠です。それぞれの生徒に時間をかけることができる環境の可能性が高いので、オープンスクールなどで教員の様子を見てみると良いでしょう。
職員室でゆっくりコーヒーを飲んでくつろいでいる教員がいるくらいのほうが健全な職場です。逆に職員室の教員が総出でオープンスクールにあたっているような学校は黄色信号です。
最後に
発達障害・グレーゾーンの子どもの学校選びとして、私立学校は有力な選択肢だと私は思います。しかし、どの私立学校にするのかによって大きく対応は変わってきます。その学校の状況や教育内容をしっかりと確認して学校選びをしていただければと思います。