2021年8月と9月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。(NHK NEWS WEBより)
受験生のワクチン優先接種
入学試験を控えた受験生への新型コロナウイルスの接種をめぐり、萩生田文部科学大臣は「(接種を実施する大学や自治体に対し、)速やかに接種を受けられるよう特段の配慮をお願いしたい。」と述べました。
学校現場に勤めている身としては、入学試験というのは学校経営にかかわる重大なイベントです。また、それは生徒にとっても同様です。昨年もそうでしたが、今年も入試で難しい判断をしなければなりません。
例年であれば、何らかの理由で受験できなければ不合格として扱う学校が多いです。そのため、多少の体調不良でも受験しに行くでしょう。体調不良者やインフルエンザであれば別室を用意して対応する学校もあります。しかし、コロナは国の一大事ということもあり、対応は学校によって大きく違います。
まず、受験生の分類ですが、主に4つが考えられます。
- 本人が新型コロナウイルスに罹患した。
- 家族が罹患等で濃厚接触者になった。
- コロナの疑いがある、体調不良である。
- 家族に体調不良者がいる。
まず、①と②は受験できないでしょう。しかし対応は学校によって分かれます。別日で受験できるようにする学校と不合格として扱う学校です。「可哀そうだから、別日で受験させてあげろよ!」という気持ちもわかります。しかし、学校には入学定員というのが決まっていて、別日を用意するということは、本来の日程の生徒の合格枠を削って、別日に特別割り当てるということを意味します。つまり本来の日程で合格できたはずなのに、不合格になる生徒が出てくる可能性があるのです。これは学校として難しい判断を迫られます。
次に③と④のパターンですが、受験の可否は学校によって判断が分かれるところです。授業がある日であれば、③と④のケース(特に③)を出席停止として扱う学校があります。いつもなら出席停止として扱っている学校では受験させるべきかの判断に迫られます。
これらの問題の解決策の一つとして、受験生にワクチンが十分に行き渡ることが期待されます。また、希望する受験生がワクチンを接種できることで、万全の状態で入試勉強に取り組むこともできるでしょうから、なおさらですね。
高校入試 ワクチン接種や陰性証明を受験要件にしないよう通知
コロナと入試の話題が続きますが、文部科学省は今年度の高校入試の際に、ワクチン接種やPCR検査の陰性証明を受験の要件にしないように、全国の教育委員会などに通知しました。
当然ですね。ワクチンの接種も個人の自由ですし、PCR検査の陰性証明なんてやろうものなら混乱は必至です。当然学校はそんなこと元からしないでしょうが、どっかの学校がやらかしかねないのも事実です。
ワクチン接種とPCR検査の陰性証明を確認せずとも、安心・安全な入試を行えるように学校は頑張らなければなりません。
家に本が多いほうがテストの正答率が高い?
文部科学省が全国の小中学生を対象に「家庭の蔵書数」を初めて調査したところ以下のような調査結果が得られました。
- 0~10冊 小学生11% 中学生14%
- 11~25冊 小学生19% 中学生20%
- 26~100冊 小学生34% 中学生32%
- 101~500冊 小学生32% 中学生30%
- 501冊以上 小学生5% 中学生5%
- 小学校算数の正答率で、蔵書が最も多い児童は、少ない子より18ポイント高い
- 中学校国語の正答率で、蔵書が最も多い生徒は、少ない子より15ポイント高い
これだけの本を読んでいるという調査ではなく、家庭にどれだけの本があるかという調査です。蔵書数は家庭の経済的・文化的な資本をはかる指標の1つです。蔵書を増やすためには家庭の経済力が必要ですし、経済力があっても文化に興味がなければいけません。その両方が子どもの学力にも影響を与えているのです。ここでも、格差が子どもの学力に影響をあたえていることが分かりますね。
全国学力テスト結果 休校の長さによる正答率の差は確認されず
昨年度は実施されなかった全国学力・学習状況調査の結果が公開されました。今年度は理科がない年度でしたので、国語と算数(数学)の2教科のみです。
分析の結果、休校の期間の長さによる平均正答率の差は、全体では見られなかったということです。ただし、家庭状況による影響などは今後、分析していくとのことです。
要するに学校に登校していようが、休校(オンライン)であろうが、勉強する子どもは変わらずするし、勉強しない子どもは変わらずしないということです。今後の分析が期待されるところですが、私個人の見解としては家庭状況はかなり影響していると考えています。家庭のサポート(幼少からの家庭教育も含めて)がある子どもは、学習習慣が身についているので、オンライン授業等になっても勉強することができます。逆に家庭のサポートが期待できない子どもは、学習習慣が身についていないので、学校に行こうが行くまいが勉強はしません。ここでも家庭教育の格差を感じてしまいますね。
ちなみに我らが大阪府は小学校28位(令和元年度44位)、中学校41位(令和元年度35位)でした。小学校の順位が上がった主な要因は国語で、中学校の順位が下がった主な要因も国語です。