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2023年1月教育ニュースまとめ

2023年1月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。

通常国会“異次元の少子化対策”が焦点 立憲・長妻氏「今回は子ども国会」

岸田首相が「異次元の少子化対策に挑戦する」と語ったことを巡り、8日の「日曜報道 THE PRIME」に出演した立憲民主党の長妻政調会長は、通常国会で子ども政策が焦点になるとの見方を示し、「子ども国会にしていきたい」と述べた。

政府が23日に召集する方針の通常国会を巡り、長妻氏は「少子化対策の機運が盛り上がっている。徹底的に与野党で提言をして、子育て予算をきちんと確保していく」として、「子ども国会にしていきたい」と語った。

少子化対策について長妻氏は、「今の自公政権の対策は的外れで小粒」と指摘。具体的には、若者向けの住宅政策や、若者をターゲットとした賃上げ対策を挙げた。

これに対し、同番組で、自民党の新藤政調会長代行は、少子化対策の具体案に加え、「国民負担をどのようにお願いするか、GDP(国内総生産)の中で国民が行政コストにどれくらいの負担をしてもらうか」が重要との認識を示した。

一方で、新藤氏は「最初に財源論から入ってはいけない。中身をきちんと決めた上で、どれだけのものが必要か、どのよう捻出するか、この順番で議論をしなければらない」とも指摘した。(FNNプライムオンライン

「異次元の少子化対策」

果たして言葉だけでなく、効果のある政策が実現されるのでしょうか。子どもを相手にしている職業として注目せざるをえません。特に私立学校と少子化は重大な課題で、特に最近では少ない受験生を取り合う状態が続き、競争力のない学校から募集停止や定員削減など厳しい運営状況となっています。

出典:内閣府

内閣府にこのようなフローチャートがありました。少子化の原因は多岐に渡り、どれか一つクリアしただけでは改善されません。異次元というからにはこれらの課題全てに対して大規模な政策をしてもらいたいものですね。

我が家も子どもがいますが、現状だとこれ以上は厳しいですね。0歳から確実に希望の保育園に無料で預けることができ、かつ所得制限のない児童手当(年少扶養控除)、子育てに協力的な街の雰囲気があれば良いのですが…。

高校総体 サッカーなど9競技 複数校合同チームでの出場可能に

少子化による部活動の部員数減少に対応するため、高体連=全国高校体育連盟は、ラグビーやバスケットボールなど9つの団体競技について、新年度から複数の学校による合同チームでの全国高校総体出場を認めると発表しました。

高体連によりますと、全国高校総体=インターハイやその予選への出場はこれまで学校ごとが原則で、複数の学校による合同チームでの出場は、学校が統廃合される前の2年間に限って認められていました。

しかし、少子化によって単独でのチーム編成が困難な学校が増えている中で、これらの学校における部活動の成果発表の機会を確保する必要があるとして、高体連は新年度から9つの団体競技について、合同チームでの参加を認めると発表しました。

合同チームで参加できるようになるのは、水球、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、サッカー、ラグビー、ソフトボール、ホッケー、アイスホッケーの9つの競技です。

一方で、合同チームが認められるのは部員不足や学校の統廃合といった理由だけで、「勝利至上主義的な発想に基づくチーム編成であってはならない」とし、各競技ごとにガイドラインを策定して細かい規定を示すことにしています。

高体連に登録されている全国の生徒数は、平成16年度には127万3383人でしたが、今年度は110万6272人と、少子化を背景に、この20年でおよそ16万7000人、率にして13%余り減少しています。(NHKニュース

教員の働き方改革や少子化問題によって、部活動のあり方が課題となっていますが、合同チームでの出場を可とする高体連が増えてきています。

ただ、無条件で認められるわけではないのが悩ましいところです。合同チームとなるとそれだけ人数が確保でき、能力の高い選手でチームを組むことが可能になります。そのため「勝利至上主義的な発想に基づくチーム編成であってはならない」と釘が刺されています。私からすれば、合同チームにより教員の負担を軽減されることにもメリットを感じますが、それだけの理由ではダメなようです。

ルールを決める高体連も多くはその部活動を指導する教員です。自分たちのチームを勝たせたいという気持ちが働くのではと勘ぐってしまいますね。それこそ勝利至上主義なのでは?

大学入学共通テスト「理科」で得点調整 選択科目で難易度に差

ことしの大学入学共通テストの本試験について、大学入試センターは、「理科」の選択科目で難易度に差があったとして、得点調整を行うと発表しました。

大学入試センターによりますと、今月行われた大学入学共通テストの本試験の「理科」では、選択科目の「物理」の平均が63.39点だったのに対し、「化学」が48.56点、「生物」が39.74点で、「物理」と「生物」の間では、大学入試センター試験の時も含めて過去最大となる23.65点の差が出ました。
このため大学入試センターは20日、分析の結果、難易度に差があったとして、得点調整を行うと発表しました。具体的には、もとの得点に応じて最大で「化学」は7点、「生物」は12点、それぞれ加算します。
その結果、「化学」の平均点は5.45点上がって54.01点に、「生物」の平均点は8.72点上がって48.46点になるということです。
一方、もう一つの選択科目の「地学」は、受験者が1万人未満のため、得点調整の対象としません。大学入試センターは、ホームページで得点に応じた換算表を公表し、受験生に確認を呼びかけています。得点調整が行われるのは、おととしの「公民」と「理科」の選択科目で行われて以来、2年ぶりです。(NHKニュース

実際に教科を指導するものとして、センター試験から共通テストになり難化したように感じています。というのも、共通テストが思考力を問う方向に舵を切ったため、特別な指導が必要になったのが大きいですね。

以前であれば2次試験前の第1ラウンドという位置付けで、「センター試験の勉強をしていたら2次試験の勉強にもなる」「センター試験が解けるようになったら基礎固めは完成」という感じだったので、共通テストになってからはそれが通用しづらくなっています。

思考力を問う問題になったことで難易度設定と平均点を読むことが難しくなりました。おそらく今回点数調整があった教科も、まさかこんなことになるとはと思ったのではないでしょうか。

私個人としては、共通テストは基礎力を問うベーシックなもので良かったように思います。どの道思考力を問うような問題は、大学の2次試験で行われるでしょうし、そっちの方が受験者の学力層を的確に狙った問題が作れると思います。

内申点アップの「反則技」⁉ 塾で中学定期テスト過去問指導 識者「本当の学力身に付かない」

中学校の定期テストの問題を集めて保管し、「過去問」として生徒に解かせる指導が福岡県内の複数の学習塾で常態化している。多くの中学が毎年、同じか似た問題を出す上、点数が内申点に反映され、高校入試の結果に影響する仕組みが背景にある。問題や正答を生徒が丸暗記する恐れもあり、識者は「本当の学力が身に付かない」と懸念する。

福岡市の塾。学校名が記されたファイルの表紙を開くと、定期テストの過去問が「1学期末」「2学期中間」などと分類されてつづられていた。国語、数学、理科、社会、英語の入試5科目だけでなく、普段は塾で教えない音楽、美術、技術・家庭、保健体育の実技4科目も収録する。

 「生徒を通じて、過去問と学校作成の解答集を20年以上集めている」。教室長は語った。生徒には定期テスト前の自主学習として解かせている。丸暗記は「させていない」と言う。

 記者が確認したところ、他にも福岡県内の複数の塾が同様に過去問を収集し、定期テスト対策に活用していた。「入試に向けて内申点を上げる必要がある」「保護者が要望している」。塾側は口をそろえた。

福岡県教育委員会によると、同県の公立高の一般入試は、入学試験の点数と内申点、内申点以外の中学の評価で合否が決まる。内申点は、定期テストの点数などを基に中学教員が付与し、実技も含めた9科目が対象。内申点をどの程度重視するかは高校で異なるが、定期テストの点数が良ければ有利になる。

 ただ、塾の過去問指導は数々の弊害が指摘される。福岡大の勝山吉章教授(教育学)は「出題内容や正答を知った上で定期テストに臨むことになり、過去問以外の多様な出題を解く実力を養えない」と分析。「経済的に塾に通えない生徒が、公平であるべき入試で不利になる恐れもある」とも訴える。

 知的財産に詳しい大下良仁弁護士(第一東京弁護士会)は「テストは著作物に当たり得るので、塾が許可なくコピー、配布するのは著作権法違反の可能性が高い」と語った。

 福岡県内の一部の塾が加盟する業界団体「全国学習塾協会」の九州・沖縄支部の担当者は「実態を調査したことはないが、問題があれば本部と協議したい」。福岡県教委は「公教育の公平性が担保されないとなれば、何らかの対応が必要になる可能性はある」とした。(西日本新聞

定期考査の過去問を塾が保有して、それを塾生に提供しているという問題です。別に構わないのでは?というのが実際に定期考査を策問している私の考えです。

学校内の定期考査の成績は内申点に大きく影響し、特に公立高校受験には重要な要素となっています。定期考査の問題は作成者によってクセが出る傾向にあり、パターンが存在します。また、教員によっては過去の定期考査を使い回す人もありますので同じ教員が作った過去問を解くことは効果的です。特に教員数が少ない実技教科系はその傾向が強く、また出題できる内容も少ないことから効果は絶大です。

経済的に塾に通えない生徒が不利になるのは今に始まった話ではありませんし、過去問演習以外にも不利な局面は多々あります。親の経済力と子どもの学力は比例関係にあるのも有名な話です。教員が当日の問題を塾に渡して、塾が配布するぐらいの極悪なことをやっているのならまだしも、出るか分からないレベルの過去問を配布しているのなら目を瞑ってあげてもいいとは思います。

対策をするのであれば、教員に過去問の使い回しをさせない方が効果があるでしょう。出題範囲があるので似たような出題にはなりますが、それだと過去問演習と普通に問題集を解くのと大差がなくなります。もちろん教育委員会には過去問演習の効果が薄くなるように「教員数の増加」を行って、人を増やすことでの業務量削減と過去問の使い回し防止を同時に行うことが求められます。

まぁ教育委員会は自分から改善するつもりもないでしょうから、塾で過去問をもらうことが効果的なのは継続するでしょう。

大阪公立大の授業料「完全無償化」維新が公約 知事・市長ダブル選

大阪府知事・大阪市長のダブル選(4月9日投開票)で、地域政党・大阪維新の会の吉村洋文代表は20日、大阪公立大の授業料について府民を対象に所得制限を設けない完全無償化をマニフェスト(公約)に盛り込むと明らかにした。

吉村氏は同様に、高校授業料の完全無償化を公約に掲げる方針を示している。さらに大阪市では現在所得制限がある0~2歳児の保育無償化、小学5年~中学3年の塾代助成についても所得制限を撤廃することを公約にするとし、国の制度と合わせて「0歳から大学院卒業までの世代で教育の無償化を実現する」と語った。

大阪公立大は大阪市立大と大阪府立大が統合して2022年4月に開学。「二重行政解消」を掲げる維新が統合を進めた。

維新は知事選に再選を目指す吉村氏、市長選に横山英幸幹事長(府議)を擁立する。知事選には共産党の元参院議員、辰巳孝太郎氏も出馬を表明。自民党もダブル選で候補の擁立を模索している。(毎日新聞)

最後に私の住む大阪のニュースです。

大阪では第1党の座にある大阪維新の会のマニフェストの内容が見えてきました。教育面では以下のことを公約に盛り込むようです。

  • 0~2歳児の保育無償化〈所得制限撤廃〉(大阪市)
  • 小5~中3の塾代助成〈所得制限撤廃〉(大阪市)
  • 高校授業料完全無償化〈所得制限撤廃〉(大阪府)
  • 大阪公立大学の授業料無償化(大阪府)

この公約は子育て世帯にとっては破壊力がありますね。特に所得制限の撤廃が嬉しいところで、所得制限にかかりそうな家庭は少なくとも高校まで、あわよくば大学まで無償化です。現金給付でない点も個人的には好感が持て、税金がきちんと子どもの教育のために使われる感じがします。

高校授業料の所得制限撤廃は私立学校で勤める私にとってはプラスです。もちろん私立学校の場合、施設費や修学旅行の積み立てなどで授業料以外にも必要な出費はあるのですが、それでも私立学校を受験しやすくなるでしょう。公立から私立への受験者流出が起こりそうですので、大阪維新の会が大嫌いな公立学校教員のみなさんからはまた反発がおきそうですね。

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