この学校、ホームページに寄付金(募金)の案内があるんだけど…。この学校受験したら寄付しなければいけないのかな…。
あーそういう学校ってまだまだありますよね。今回は寄付についてのお話です。
私立学校にある寄付金文化
私立学校は授業料(入学金や諸経費などを含む)としてお金を集めることで運営ができています。しかし授業料だけでは経営が成り立たない学校も存在していて、たとえ募集定員を満たせていたとしても赤字運営の学校もあるのです。そういう学校の場合、授業料+αでお金が必要になるので、寄付金を募ることになります。
また、黒字運営でもさらに色々な教育に手を出したいと思うような学校でも寄付を募って教育のさらなる拡充を図ろうとしています。企業でしたら、黒字は青天井に延びていくことでしょうが、学校の場合は施設のキャパシティの加減で生徒数の上限が決まっていますので、どれだけ良い教育をしても収入の上限はほぼ決まっています。寄付金はその上限を突破する有効な手段の一つですので、利益追求に熱心な学校では熱心に寄付金を募る傾向にあります。
もちろん健全な私立学校もありますよ!そういう健全な学校は寄付のお願いを学校から積極的にすることはありません。
なぜ募集定員を満たしているのに赤字なのか?
募集定員が満たされていないがために赤字経営に陥っているなら、教育の質を保つための寄付金も納得できるかもしれません。ではなぜ募集定員が満たされている学校も赤字に陥り、寄付金を募るのでしょうか。
私立学校には様々な支出があり、公立学校よりも支出が多い傾向にあります。人件費や施設維持はもちろんのこと、土地を借りている場合はその賃料、生徒募集が不安定な学校でしたら宣伝のための広告料や生徒募集につながるような派手な教育、学校法人がブラックだと法人に対する上納金など、支出は多岐に渡ります。この支出を抑えない限り赤字経営から脱却できないのですが、これを抑えると生徒募集が安定せず定員割れに陥ってしまいます。そこで収入面を増強するために寄付金を募るわけですね。
寄付金は払うべき?
現役私立学校教員の視点から申しまして「寄付は不要」と断言できます。なぜなら教育に対する対価は既に授業料としていただいていますので、それ以上は不要です。教員としてはすべての生徒を平等に見ていますので、寄付をしなかったからと言って教育の質を落としたりするようなことはしません。また、進学や推薦などにも影響しませんのでご安心ください。
確かに寄付をしてもらえることで学校の教育環境は良くなります。お子さんにより良い教育環境をと思うのであればありな選択肢かもしれませんが、寄付額ほどのリターンはないでしょう。ただ、デメリットはありませんが、メリットがないとまでは言えないのが私立学校の闇です。どのような闇があるのかをご紹介しましょう。
寄付があったことは学校内で共有している
多くの学校では、学校に寄付があった場合、その情報は学校内で共有されていて、特に学年内ではしっかりと把握されるような状況になります。生々しい話「〇〇君の保護者からは〇〇万円の寄付を頂いています。」とかいう話が学年内ではされていて、暗に「(保護者対応には気をつけろよ!)」ということを意味しています。
授業料を頂いている以上、平等に扱わなければならない生徒ですが、そんな情報が入ってしまうと平等に扱うことは難しく特に気を使った丁寧な対応をしなければなりません。寄付をしないことにデメリットはありませんが、寄付を募る学校では教育が歪められている可能性はあります。
私がブラック私学に勤めていたとき、最も闇を感じた例では、問題行動を起こした生徒(保護者が高額寄付者)の処分を校長権限で非常に軽いものにしたことはありますね。
ノルマもあるよ!
恐ろしいことですが、学校に寄付のノルマを課している学校法人もあります。大阪三大ブラック私学と呼ばれているとある学校法人で実際に行われていたようです。
学校法人の周年行事のために、学校法人から「保護者からこれぐらいの寄付をいただこう」という目標という名のノルマが提示されます。このノルマを達成できないと、理事長などから厳しい指導が入りますので、ノルマを達成するために校長や事務長は保護者に対して深く頭を下げるわけですね。
なんと寄付の強要は教員に対しても行われています。「子どものより良い教育のために教員も寄付しろよ!」という圧力がかかり教員にも寄付を呼びかけ、「給料の◯ヶ月分」という目安という名のノルマがあります。なんとも恐ろしい法人ですよね。このノルマを達成できないと教員自身に法人からの圧力がかかりますし、校長にもノルマが達成できていないと指導が入ります。
このように寄付に頼っている学校法人では、非常に不健全な状況になっていますので、優秀な教員ほど去っていくのです。保護者からすれば寄付をしてさらに良い教育になればと思っているかもしれませんが、優秀な教員が去っては本末転倒なところです。
目のつきやすいところで寄付や募金を募る学校には気をつけよう!
より良い教育のために寄付を募っているというのが建前ですが、その寄付のために様々なデメリットが生じています。前述のような一部の生徒・保護者への優遇や優秀な教職員の離脱などですね。特に学校ホームページでまで寄付を募っているようなところはかなり危険な学校ですので、気を付けた方が良いでしょう。
そういう学校はことあるごとに寄付を呼びかけてくる
寄付に積極的な学校では、寄付のお願いは入学時だけではありません。周年行事などのイベントごとに寄付のお願いがありますし、毎年にように寄付のお願いをされます。断っても断っても繰り返されますので居心地が悪く感じるかもしれません。
また、周りに寄付をする保護者が出てくるとさらに居心地が悪くなり、マウント合戦になる可能性もあります。保護者同士の無用な争いになりかねませんので、寄付をしないと心に決めていても寄付に積極的な学校は合わない可能性があります。
最後に
寄付金はどこの私立学校も募集していると言って良いでしょうが、寄付金をあてにしている学校というのは非常に不健全です。お子さんの学校選びの際には、学校ホームページをチェックして、トップページやメニューの中など目につくところに寄付や募金に関する項目がないかを注目するのも良いでしょう。