子どもを私立中学校に活かせようと思うんだけど、プレテストっていうのがあって、これって受けた方が良いの?
そこが第一志望だったら良いと思いますが、そうでもないなら止めた方が良いというのが私の意見ですね。今回は一部の私立中学校で行われているプレテストについてご紹介します。
プレテストとは?
私立中学校で行われる、本番の入試前にその学校の雰囲気を感じながら当日のテストと同様の問題を事前に解くことができるテストのことです。しかも、無料で受験できるところがほとんどで、解説まで行ってくれる学校まであります。
第1志望の私立中学校が実施していれば激熱
実施しているほとんどの学校で、プレテストで出題される問題は当日の入試問題と酷似している(出題範囲が似ている)ことが大半です。すなわち、プレテストを受験してその問題を中心に対策をしていれば合格はグッと近づきます。
第1志望の学校がプレテストを実施していれば是非とも受験した方が良いでしょう。学校によっては、試験だけでなくその後の解説を通してみっとりと対策してくれます。本当に至れり尽くせりですのでオススメですよ。
ただ第1志望であっても、一部のお子さんは受験しないことの方がメリットがあります。それについては後述します。
学校側のメリットは?
では、なぜ学校側はわざわざプレテストを行うのでしょうか。いくつかの理由をご紹介しましょう。
受験生の囲い込み
同じ難易度の学校で悩んでいる場合、合格する可能性が高い学校と可能性が低い学校があれば前者を選びたいのが人間の心理です。プレテストを受験していれば入試問題の内容がほぼ分かっている状態になるので、生徒や保護者からしたら合格する可能性が高い学校になるでしょう。そうなるとライバル校との受験生の争奪戦において非常に有利です。
できるだけ多くの受験生にプレテストを受験してもらって、「この学校なら合格できそうだ」という感覚を持ってもらい、第1志望にしてもらったり、滑り止めで受けてもらったりして受験生を囲い込みたいのが学校側の狙いです。
優秀な生徒を特待生で釣り上げる
プレテストを受験してくれた受験生の中から特に優秀な生徒は学校も喉から手が出るほど欲しい生徒になります。学校側が欲しい生徒は大きく2種類あり1つは「学校を運営するために必要な授業料等を確実に収めてくれる生徒(保護者)」。そして、「生徒募集の広報につながる進学実績を作ってくれる優秀な生徒」です。特に後者は学校側はお金を払ってでも確保したいぐらいの存在です。
そのためプレテストを受験した中で特に優秀な生徒は特待生を約束し、受験してもらうように釣り上げます。場合によっては学費無料・半額など様々な条件があり、他の学校が第1志望であっても何とかしてこっちに振り返ってもらおうと必死です。このように優秀な生徒を実際の入試より先に優秀な生徒を引き込むためにプレテストは欠かせないのです。
ちなみに少しでも可能性を広げようと、積極的に塾に広報に行きます。塾から「この学校のプレテスト、練習になるから受験してみたら?」という提案があったら、裏で学校と塾が繋がっています。
えっ、そんなことがあるんですか!?
ええ、プレテストを実施するような学校は塾の接待も欠かしませんし、ズッ友ですよ!
不合格者の選別
驚かれるかもしれませんが、本試験を受けていないのに不合格者を決定する学校が存在します。私が過去に勤めていたブラック私学もそうでした。これが一部の
どのようにして不合格者の選別を行うかというと、決してプレテストの結果で選別しているわけではありません。プレテストを受けているときの様子や、その後に行われる解説会などのお子さんと直接話す機会に選別しているのです。
試験監督は学校の教員が行っており、極度に不審な行動をする生徒(カンニングだけでなく奇行も)をチェックし、報告することになっています。(本試験のときも行っています。)それが複数の教員から報告が来ると完全にブラックリスト入りです。そういう受験生は本試験が始まる前から不合格がほぼ確定していて、塾などに通っていれば塾を通して受験しない方が良いと伝えます。
例えばどんな受験生がいたんですか?
試験中の例であれば、試験中にもかかわらず独り言を言いはじめたり、カンニング目的でない激しいキョロキョロ(多動傾向)、試験中なのに問題を解かずに絵を描いているなどとんでもない受験生は報告しましたね。
解説会の例だと、解説しているのに聞く耳を持たない、指示に従わず違うことをしている、といった入学してもその後の指導が困難だろうなという生徒は報告します。
どちらも、その学校の生徒として相応しくない(入学後の苦労の方が多いのが見えている)という視点で判別しています。
このように、試験当日だけでは分からない(見落としてしまう)ような受験生の特性を見抜き、入学後の苦労を事前に回避することもプレテストの役割となっています。そういう意味では、お子さんの行動が極度に気なる場合(ほとんどのお子さんは大丈夫です)は、第一志望の学校であってもプレテストを回避するという選択もありです。
筆者がプレテスト実施校をオススメしない理由
私自身はプレテスト実施校をオススメしません。その理由をご紹介しましょう。
プレテストに教員の力が割かれている
学校教員はその学校に在籍している生徒のために最高の授業を提供できるよう努力すべきです。しかし、プレテストを行うためには「問題の作問」「プレテストの広報」「プレテストの実施(企画・運営)」「テスト監督」「採点」「会議」「発送作業等」が必要で学校によってはさらに「問題の解説」まで行っています。これらには多大な時間が必要で、その時間は本来在校生のために割く時間です。
学校によってはプレテストを複数回行うような学校もありますので、その度に在校生の時間を奪っていきます。そう考えるとプレテストに積極的な学校は入学するまでの面倒見は良いかもしれませんが、入学したら待遇が悪くなることが懸念されるのでオススメしていません。
また、教員を極度に疲弊させます。そんな疲弊した状態の教員では本来のパフォーマンスを発揮できるわけもなく、良い授業や運営がされていない懸念があります。
適正な入試が行われているのか?
そして、入試自体が適切に受験生の学力を測れているのか甚だ疑問です。プレテストは言うならば学校側が能動的に行う問題流出です。それを一度解いている受験生と、そうでない受験生では問題の難易度が大きく異なることでしょう。こんな不公平な状態で入試が行われ、しかもそれがコース分けなどに反映されるのです。
果たして入学後の学年やクラス・コースは、子どもにとって勉強しやすい環境(授業難易度が適切に設定されるのかなど)になっているのでしょうか?
最後に
プレテストは元から第1志望の学校であれば積極的に利用するのがお得ではありますが、デメリットもたくさんあります。特に第1志望でもないのに受験する場合は、その後の熱烈な囲い込みにあいますので覚悟が必要です。タダより高い物はないとはこのことですね。