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2022年5月教育ニュースまとめ

2022年5月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。

教員免許更新制を廃止 関連法改正案が成立

「教員免許更新制」の廃止を盛り込んだ教育公務員特例法と教育職員免許法の改正法が11日の参院本会議で可決、成立した。免許に10年の有効期間を定め、更新時の講習受講を義務付けた現行制度を7月に廃止。代わりに、教員が自主的に研修を受ける形に移行する。資質向上につなげるため、2023年度からは教員ごとの研修記録作成を教育委員会に義務付ける制度を導入する。

 大学の教職課程などを経て取得する「普通免許」と、専門知識を持つ社会人らが教委の検定を経て取得する「特別免許」について、有効期間を撤廃。7月以降に期限を迎える教員は、講習や更新手続きが不要となる。過去に取得したが更新しなかった人の免許も再び使えるようになる。(時事ドットコム

ついに悪名高い教員免許更新制が廃止されることとなりました。教員にとってほとんどメリットがなかったこの研修ですが、教員の多忙と教員不足の深刻化もあってか、思ったよりスムーズに廃止まで持ってこれました。しかもこの研修を受けなかったことにより教員免許を失効した人まで免許を復活してくれる待遇ぶりです。それだけ、教員の人手不足は深刻なのです。

免許復活させるぐらいなら免許更新にかかった費用と時間を返して欲しいぐらいの愚策です。この免許更新制度の失敗を自ら完全に認めてしまっていますよね。

しかし問題は教員ごとの研修記録作成が義務付けられる制度が導入されることですね。もう分りきっていることですが、教員の負担増です。

文部科学省「教育委員会!研修記録の作成をしなさい!」

教育委員会「分かりました!校長、研修記録作成しなさい!」

校長「は、はい…。先生方、研修の企画と参加をお願いします。それに参加したときの記録も必ずつけてください。」

一般教員「し、仕事が増えた…。」

結局は末端の教員が疲弊するだけなんですよね。この研修記録作成がどのようなものになるのかはまだ確定はしていませんが、嫌な予感しかしません。それに私のように私立学校に勤める教員はどのような対応を求められるのかも疑問です。私立学校は教育委員会の力がほとんど及びません。免許更新制度は教員免許に関わることだったので学校種を問わず、すべての教員が対象だったのですが、教育委員会に作成義務があるとすると私立学校教員は免除の可能性が高いです。さて、この研修記録に次の注目が集まります。

県立高の朝課外廃止へ 県教委方針 「主体的な学び」遠く? 教員、保護者の負担も考慮

 熊本県教育委員会が、県立の普通科高校を中心に実施されている「朝課外」を廃止する方針を打ち出し、各校に検討を求めたことが20日分かった。新学習指導要領が重視する生徒の主体的な学びと懸け離れているほか、教員や保護者の負担も大きいことから、長年続く学力向上策を改める。

 県教委によると、朝課外は教育課程に含まれない補習。全国には浸透していないものの、熊本や福岡、長崎、鹿児島など九州各県では実施されてきた。あくまで任意だが、生徒や保護者からは「事実上の強制になっている」と見直しを求める声が出ていた。(熊本日日新聞

九州もやんちゃなことやってますね~。生徒・保護者の負担もそうですが、教員の負担もかなり大きいですね。学力向上のための勉強はとりあえず長時間やればよいというものでもなく、学習者の意欲に関わるところが大きいです。半ば強制で実施されていたということで、ほとんどの生徒にとってはただただ苦痛な時間で効果の薄いものだったでしょう。現に九州の高校生が特段学力が高いという印象は全くありません

それに、きっとこの朝の時間は勤務時間外で実施されていたことでしょう。そう、つまり給特法により教員には賃金が支払われていたのか怪しいし、支給されていたとしても部活動と同じ扱いで、かなりの薄給であったことは容易に想像がつきます。教員側としても早く廃止してもらいたいと思っていたことでしょう。

ただ、教育委員会が廃止すると言っただけで、実際に廃止されるかは学校にゆだねられているようです。また、PTAからの要望でスタートした学校もあるようで、PTA次第では継続もあり得ます。教員に負担が大きくメリットもあまりないようなことは、スパッと辞めてしまえばいいのにと思いますね。

始業前にほぼ強制の学習時間を設定しているのは、私立学校でも良くあります。特に進学実績を上げることに迫られているような私立学校で多いですね。よくあるパターンは、毎朝テストを実施し、その結果によって放課後に補習するという流れですね。

1年半「別室隔離」のいじめ被害児童 大阪市教委の職員から「暴行」されていた…「非常勤嘱託」理由に公表されず

 大阪市の小学校で、児童が1年半にわたって別の教室に隔離されていた問題。 この児童が教育委員会の職員から暴行を受けていたにも関わらず、市が公表していなかったことが、関西テレビの取材で新たに分かりました。

 問題となっているのは、大阪市立の小学校に通う6年生の児童を巡る対応。児童は2年生のときから、同級生によるいじめで精神的に不安定な状態が続いていました。学校はこれを理由に、保護者の同意を得ることなく、4年生のときから1年半にわたり児童を別室に隔離し、個別で指導していたことが判明したのです。

 5月19日、大阪市教育委員会は「不適切な対応だった」と謝罪しました。さらに、関西テレビの取材で、同じ児童に対して別の不適切な行為があったことが新たに分かりました。教育委員会の職員からの暴行です。3年前、当時小学3年生だった児童に対し、市教委から学習支援のために派遣されていた60代の非常勤職員が、暴行を加えたというのです。

 教育委員会などによると、暴行が行われたのは多くの教師がいる職員室。当時、児童は教頭に悩みを相談していました。そこに、他の生徒とトラブルを起こしたと勘違いした職員が、児童を問いただしにやってきます。児童は否定しましたが、職員はそのまま椅子ごと倒し、馬乗りになって両腕を押さえつけました。その後も校長や教頭の静止を聞き入れず、職員は5分ほどにわたり馬乗りを続けたといいます。(カンテレ

教員の体罰・暴行などは度々報道されますが、教育委員会の職員(非常勤委託)が暴行という非常にショッキングなニュースです。地域の学校を管理するはずの教育委員会が、自ら学校で事件を起こしていくあたり世紀末感がありますね。非常勤の委託職員とはいえ、自らの組織に属する職員の素質を見抜けないような教育委員会に、教員採用試験で本当に実力のある教員を見抜ける力があるとは思えません。

この事件いくつもの問題点があります。まず、1年半もの間、別室で隔離していたことの異常性。そして、そのことを生徒や保護者に許可なく行っていたこと。教育委員会職員、自ら暴行を行ったこと。教育委員会が情報公開をしなかったこと。かなりの問題点がある事件で、今後の詳細な事実の把握と再発防止が望まれます。

「しまねで先生になりませんか?」島根県がラッピングバスで教員を大募集!

教員の不足が続く公立学校の人材確保につなげようと、島根県が、教員募集を訴える広告を掲げたラッピングバスを導入、運行を始めました。5月23日から運行を始めたラッピングバス。車体には「しまねで先生になりませんか?」というメッセージが大きく書かれています。

島根県内の小中高校、特別支援学校では、いわゆる団塊世代の一斉退職や長年の志願者減少などのため教員不足の状況が続いていて、今年4月1日現在で、不足は過去最も多い32人に達しました。

こうした状況を受けて、県の教育委員会は教員を緊急募集、今年3月から、東京都内の街頭ビジョンなどでプロモーションビデオを放映するなど教員の確保に向けてPRに取り組んできました。その結果、8人を新たに確保しましたが、教員不足の解消に至っていないため、今回、ラッピングバスを使った広報を新たに始めました。バスは、松江市内で2024年3月まで運行される予定です。

(島根県教育庁学校企画課大野雅史課長)
「街中でこのバスを見た人が教員と言う仕事を念頭に置くキッカケになればと思います」

県教委は、今後、教員募集に特化したホームページも開設して、全国からより多くの人材を確保、学校現場での教員の負担軽減や教育の質の向上につなげたいとしています。(TSK さんいん中央テレビ

全国的に一気に進んでいるのが教員不足です。ただPR不足が原因ではないんですけどね。労働時間の問題と給料の問題が解決されれば一気に募集は安定すると思うのですが、そこにはほとんど手をつけずに問題を解決したいのでしょう。この辺りが甘いですよね。

ここまで、教員の労働環境は非常に劣悪なループを辿ってきました。

  • 子どもの学力低下や時代の変化 → 学習時間や内容を増やそう! → 労働時間の増加(給料変わらず)
  • 教員の不祥事が増えた! → 教員の資質を向上させるために研修や免許更新制度を新設! → 労働時間の増加(給料変わらず)
  • 教員が減った! → 採用の基準を緩めよう! (なぜか労働環境の改善は行わない)→ 教員の資質低下

労働環境を改善し、給料を大幅に増やせばほとんどの問題は解決できるんですけどね。大企業並みの給料を支払えば志願者は激増し、そして優秀な教員を確保できるのにそれをしない。ここは本当に強情ですよね。

ちなみに我がホワイト私学は公立の1.5倍ほどの給料と、公立の半分ほどの実労働時間なので、教員の募集を行えば倍率は100倍以上になります。早くここにメスを入れないと日本の教育は崩壊して、私学に子どもを通わせることのできる家庭しか良い教育を受けれないという教育格差が広がってしまいますよ!

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