今回は教員として働くための基礎知識として、私立学校の専任教諭・常勤講師・非常勤講師の雇用形態による働き方と待遇の違いをご紹介します。
専任教諭
雇用形態
公立の教諭と同じものだと思ってもらって大丈夫です。独自の教員採用試験試験を経て採用される正規雇用です。ほぼ、終身雇用になりますが学校の経営状況などにより保証はされません。公立とは違い異動はほぼありません(系列校間で異動を行う場合があります)。副業は原則不可ですが、就業規則次第ではOKです。
公立との大きな違いは専任教諭の比率がほとんどの学校で低いということです。専任教諭と常勤講師の比率が半々という学校も多くあります。そのような学校は専任教諭への負担が大きくなるというのが特徴です。また、就業規則があるというのがポイントでこれによって公立より働きやすくなったり、逆に働きにくくなったりします。そのため、学校による差が大きいのも特徴です。
働き方
フルタイムでの勤務になりますが、公立と違い土曜日も授業があり勤務日です。その代わり「研修日」として、月〜土曜日のどこかで1日休みの日を作ってくれることがほとんどです。ただ、時間割の関係上無理な場合もあったり、そもそも仕事が多すぎて休んでられないなど、結局休みなく働き続けることもあります。
専任の場合、勤める私立学校が初めてでも、教員経験があるといきなり担任を持つことがあります。前述の通り、専任教諭の比率が低い学校が多く、専任教諭は役職でもない限り、毎年担任を持つことになります。公立のような教諭だけど担任を持たないなんてことはあまり見られません。
分掌も2年目あたりから重役に当てられることが良くあります。また、私立学校は新しいことを打ち出すペースが早いので、一度仕事を覚えてもまた新しいことを覚えなければならないのが大変なところです。
放課後の部活動ももちろんあります。土曜日は半日授業の学校がほとんどですが、午後からは部活動になります。日曜も活動するような部活動ですと、休める日は少なくなります。
前述の通り、私立学校は就業規則によって働き方が大きく変わります。その最たる例を紹介したものが、下の記事ですのでご参考にしてください。
ホワイト私学とブラック私学待遇
各学校の給与規則に則って決まるのですが、多くの場合は公立と同様に、年功序列で徐々に昇給していきます。また、各種手当(住居手当・扶養手当・交通費等)は学校次第なところが多く、公立と比較すると見劣りする学校が多い印象です。残業手当の取扱も学校次第なところで、公立同様の一律4%の教職調整額が付与される場合もあれば、ちゃんと残業代が出るところもあります。まあ、多くの学校は教員調整額ですので、勤務時間がどれだけ長くなっても一定額で変わりません。また、教員調整額すらない学校もあります。
給与額はピンキリですが、公立よりやや良いところの方が多いです。もちろん、経営が窮地に陥っているところは専任教諭だろうが給与が低くなるところが多くなります。
しかし、経営が安定しているところでは年収1000万円も狙えますので、給料が良いところはとことん高給になるのが私立の専任教諭のメリットです。
常勤講師
雇用形態
公立とは異なり、常勤講師でも教員採用試験を合格する必要がある非正規雇用です。大概は1年契約で契約の更新は2度まで(最長3年間の勤務)とするところが大半です。稀ではありますが、中には無期限の延長ができる学校もあります。
大体は契約更新できますので、公立ほど契約を切られる心配はありません。また、常勤講師から専任教諭への登用も多くありますので働きぶりが良ければ専任への道が開けます。逆にいきなり専任というのはなかなかハードルが高くなります。契約は最大延長で3年間ですので、それまでに専任教諭や公立の教諭を決めたいところです。
なお、専任教諭と同様副業は原則不可ですが、就業規則次第では副業もOKです。
働き方
仕事内容は専任教諭とほぼ同等の勤務になります。しかし、ここも学校次第で生徒募集に関する活動はしなくてよかったり、部活動を見なくてもよかったりと学校によって専任教諭より仕事量が少なくなっている学校もあります。
前述の通り、専任教諭の割合はそれほど高くありません。すなわち、専任だけでは手が回らない状態です。そのため、常勤講師だろうと分掌で重役にあたったり、担任もバンバン回ってきます。
待遇
専任教諭よりは少ないですが、公立の常勤講師以上はもらえるという認識で良いと思います。(もちろん例外はありますが。)
稀にではありますが、専任と常勤講師の給与が同じ学校も存在します。その場合は完全に業務が同じになりますので、常勤講師だろうとガッツリ仕事が回ってくることになります。このような学校は、逆に専任に魅力を感じなくなりますね。
ボーナスや各種手当はありますが、専任と区別しているところが多く、ボーナスの倍率が違ったり、扶養手当や住宅手当がなかったりと差をつけているところもあります。年収では専任教諭に遠く及びません。また、公立では常勤講師にも出ていた退職金は出ない学校がほとんどです。
教員としての経験年数によって基本給が決まる学校が大半です。昇給はありませんが、公立同様に契約更新ごとにちょっとずつ経験年数が増えるので実質昇給のようなものです。しかし専任教諭ほどの上昇額ではありませんし、上限もあります。大体30代前半で頭打ちに合いますので、それまでに正規雇用を決めたいところです。
私の場合ですが、比較的給料が良いと言われていた私立学校に常勤講師として勤務したとき、20代後半で年収500万円弱と500万強、30代前半で年収は550万弱ぐらいです。
責任や仕事量に差があるのであれば、常勤講師でもいいと思いますが、差がほとんどないようであれば専任にしかメリットはありません。
常勤講師は、どうしても安く買い上げられている労働力感が否めません。
非常勤講師
雇用形態
専任や常勤ほど選考にかかる日程が多いものではありませんが、教員採用試験を経て採用となる非正規雇用です。5教科以外(俗に言う副教科)の教員は非常勤として採用することが多いです。
働き方
授業のみを行うことが契約ですので、分掌や学級担任はありません。そのため、授業が始まるまでに学校に来て、授業が終われば帰ってOKです。休み時間も拘束されませんが、授業準備に充てることが多いです。しかし、授業準備の時間は給料は発生しません。授業のみに集中できるというのが最大のメリットです。
コマ数は学校との相談によって決まりますが、コマ数は学校によりけりなところがあるため、自分はがっつり入りたくても学校の都合でそうならない場合が多いです。
また、副業がOKですので他校の非常勤を掛け持ちしたり、空いている時間(主に夕方~夜)に別業種の仕事や塾の仕事をしている人が多いです。というか、よほどコマ数が入っていない限り、副業をしないと十分な給料が入らないので、もはや副業は必須レベルです。(本業は別で、非常勤講師を副業としてやる感覚の人もいます。)
公立との働き方での違いは後述の長期休暇中の取り扱い方です。
待遇
ここはかなり学校によって違いがあります。
- 公立と同様に授業のコマ数(実授業数)に応じて給料が発生し、授業が無ければ無給になり、夏休みなどの長期休暇は給料が途切れるパターン。
- 平時の時間割を参考に週あたりのコマ数で給料が発生し、長期休暇中などで休みでも、その時間に学校で雑務(生徒募集に関わる雑用など)をこなし、給料がもらえるパターン。
- 平時の時間割を参考に週当たりのコマ数で給料が発生し、休みの日は学校に来なくてもみなしで給料がもらえる激アツパターン。
この3種類が主流です。2つ目と3つ目は、常に安定した給料が入るのでかなり安心感があります。
ボーナスや手当も学校によって様々です。扶養手当や住宅手当が出る学校はほとんどありませんが、ボーナスはない学校・一定コマ数以上で出る学校・無条件で出る学校があります。また、私学共済についても一定コマ数以上でないと加入できない学校・無条件で加入できる学校とこちらも様々です。
待遇面はピンキリですので、公立のように副業必須というわけでもなくある程度の生活はできます。ただ、養う家族がいたり平均以上の暮らしがしたい人は副業・兼業をする必要があります。時間を有効に埋めることができれば、公立の教諭より高い収入を得ることも可能です。副業ができない教諭は頭打ちに空いますので、時間を武器に働けるのが非常勤講師の優位点です。もちろん労働時間は長くなりますが。
個人的には非常勤をやるなら公立より、私立の方がメリットが多いと思います。
最後に
今回は私立についてのご説明しました。公立のような一律で決まっているわけではなく、学校によって結構違いがあります。募集要項をよく読んで、自分に合った働き方ができる学校で働いていただければと思います。公立の雇用形態については、下記のリンクをご参照ください。
教諭・常勤講師・非常勤講師の違い(公立編)