2022年12月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。
休日の部活、地域移行しても教員が指導? 先行実施で浮かんだ課題
スポーツ庁が2021年度に、一部自治体で中学校の運動部活動の地域移行を先行実施したところ、対象となった全国102自治体のうち半数近くの45自治体で、教員が指導を担っていたことがわかった。部活の地域移行は、教員の負担軽減を目的に来春から本格的に始まる予定だが、実際に負担が減るかは未知数だ。
部活の地域移行は、スポーツ庁と文化庁の有識者会議がそれぞれ、今夏に提言をまとめた。23~25年度を「改革集中期間」とし、公立中学校の休日の指導を、民間クラブなどに託していく方針だ。
スポーツ庁はこれに先立ち、21年度に102自治体の一部の中学校で地域移行を実施した。この自治体に同庁が指導者の属性を聞いたところ(複数回答可)、最も多かったのが、総合型地域スポーツクラブや競技団体などの地域指導者(71自治体)。2番目に多かったのが教員(45自治体)だった。続いて社会人(39自治体)、大学生(16自治体)だった。教員については原則、希望者が指導し、1人で担当したり、地域指導者らと一緒に担当したりする場合もあった。(朝日新聞デジタル)
結局教員が指導するんかーい!
案の定ではありますが、そう簡単に指導者が集まるわけはありません。よほど待遇が良いとか、地域に指導できる環境が整っていない限り、教員なしで部活動を実施するのはどこの自治体もむずかしいでしょう。
また、教員が本当に部活動を指導したいと思って志願している人もいるでしょう。むしろ教科よりも部活動に力を入れてしまっている人もいるぐらいですので、一定数は教員も混ざってくるとは思います。果たして望まぬ部活動顧問をさせられている人が完全になくなる日は来るのでしょうか。
部活指導の「地域移行」、事業費28億円の見通し…スポ庁・文化庁要求額の半分に満たず
政府の2023年度予算案で、公立中学校の部活動指導をスポーツ団体や文化芸術団体に委ねる「地域移行」の事業費が約28億円となる見通しであることが16日、分かった。
スポーツ庁と文化庁は23~25年度を「改革集中期間」とし、23年度に全国約9000校の3割で地域移行を始められるよう、概算要求で118億円を計上していた。予算規模は22年度の第2次補正予算で前倒しした19億円と合わせても要求額の半分に満たず、3割移行は難しいことから、23年度はモデル事業の拡充に重点を置き、経済的に困窮している家庭の会費支援などを進める方針。
地域移行を巡っては、指導者や運営団体を確保できないなどの懸念が広がっている。両庁は25年度末までの達成にこだわらずに柔軟に対応する考えで、3年間を「改革推進期間」と改称する。(読売新聞オンライン)
金もないんかーい!
部活動の地域移行に関するニュースが続きます。なんと地域移行にかかる要求額の半分すら予算がついていないことが判明しました。結局は口だけのやってますアピールで終わってしまうのでしょうか。予算がなければ報酬が支払えません。報酬がないのに働く人を集めることはできません。部活動の地域以降はなかなか進まない、もしくは停滞することが心配されています。
子どもの年間学習費 公立小35万円余 公立中53万円余で過去最高
学校や塾など保護者が子ども1人の学習にかける年間の費用は、公立の小学校で35万円余り、中学校で53万円余りとなり、ともに過去最高となったことが文部科学省の調査でわかりました。
この調査は、文部科学省が去年4月からことし3月にかけて、全国の保護者を対象に抽出して行ったもので2万7000人余りから回答を得ました。
それによりますと、昨年度1年間でかかった子ども1人当たりの学習費は公立の小学校に通わせている場合は35万2566円、私立の小学校で166万6949円、公立の中学校で53万8799円、私立の中学校で143万6353円などとなりました。
調査の方法などが一部変わっているものの、いずれも平成30年度に行われた前回の調査より増加し、過去最高となりました。学習塾やスポーツ、文化活動など学校外での費用の平均額は、公立の小学校では24万7582円、公立の中学校では36万8780円でした。今回の調査をもとに、高校3年までの学習費の総額を算出すると、幼稚園から高校まですべて私立に通うと1838万円、すべて公立だと574万円となりました。(NHKニュース)
子どもは減っていますが、子ども1人あたりにかける学習費は上昇しています。子どものより良い人生を思うと学習費は増えていきます。また、子どもにかけれる費用が子どもの学力やその後の収入に比例する傾向にあるのも知られているので、他の家庭より学習費をかけたいと思う家庭は多いでしょう。
また、晩婚化も影響があるでしょう。経済的に余裕が出ているタイミングでの出産になることでしょうし、出産リミットの加減で1家庭あたりの子どもの数が減少し、少ない子どもに集中的に投資できる環境にあります。さらには経済的に余裕もない人はそもそも結婚できなかったり、子どもを持つことを諦める時代になっています。収入に影響されず子どもを安心して産めるような政策でも行われない限り、今回のように傾向は続くでしょう。
月45時間超残業の教職員 中学校5割 小学校と高校3割余 国調査
教職員の働き方についての調査で、国が定めた上限の月45時間を超えて残業をしていた教職員の割合が、中学校の5割、小学校と高校の3割余りに上ったことが分かりました。
調査した文部科学省は「一部改善はみられるものの、依然として長時間労働の教員がいる。改善に向けた取り組みを加速させたい」としています。
文部科学省は、全国1794の都道府県や市区町村の教育委員会などを対象に、教職員の働き方改革の状況を調査しました。ことし4月から7月の残業時間の平均を調べたところ、国が上限としている月45時間を超えた教職員の割合は、高い順に
▽中学校で53.7% ▽小学校で36.9% ▽高校で36.6%となり、
いずれも前の年とほぼ変わらない結果となりました。
中学校での残業時間を詳しく見ると
▽45時間を超えて80時間以下が40% ▽80時間を超えて100時間以下が8.9% ▽100時間を超えたのが4.8%でした。
一方、業務の効率化についても調べたところ、欠席連絡など学校と保護者の間での連絡手段のデジタル化を「実施した」という市区町村は、昨年度は56.3%でしたが、今回は80.5%に大幅に増えていました。
具体的な取り組みについても調べ、小学校で教科担任制を導入し、1人が受け持つ教科を減らすことで授業の準備にかける時間を短くした例などがあったということです。文部科学省は「一部改善はみられるものの、依然として長時間労働の教員がいることは事実だ。改善に向けた取り組みを加速させたい」としています。(NHKニュース)
働き方改革なんて無かったんや
近年、教員の働き方を改善しようと様々な取り組みがされてきました。教員の長時間労働を少しでも改善するためにですね。しかし、効果はほとんどなかったようです。
それもそのはず、仕事が減る量よりも仕事が増える量の方が多いからです。学校現場では常に新たな取り組みが推奨され、次から次へと新たな仕事が追加されていきます。また、劣悪な労働環境のため、心身に不調をきたし、休職する教員も増えています。それなのに一向に労働環境は改善せず、休職する教員の穴を補充することができないとなると、他の教員へと負担は分散します。この負の連鎖により、長時間労働は改善されないのです。
教員数を増やす。これだけで改善されることは多いんですけどねー。人が増えれば仕事を分散できて1人当たりの負担は軽減されるんですが…。
発達障害の可能性がある小中学生は学級に8.8% 文科省調査
発達障害の可能性があり特別な支援が必要な小中学生は通常の学級に8.8%、11人に1人程度在籍していると推計されることが文部科学省の調査で分かりました。前回10年前の調査から増加しており、支援の充実が課題となっています。文部科学省は、ことし1月から2月にかけて全国の公立の小中学校と高校に抽出調査を行い、1600校余りの7万4919人について担任などから回答を得ました。
その結果、読み書きや計算など学習面の困難さや、不注意や対人関係を築きにくいといった行動面の困難さがあるなど、発達障害の可能性がある児童生徒は小中学校の通常学級に8.8%、11人に1人程度在籍していると推計されることが分かりました。
調査方法などは一部変わっているものの、前回10年前の調査の6.5%から増加しています。また、今回初めて調査した高校では推計で2.2%でした。
文部科学省の有識者会議は増加の背景について、見過ごされてきた子どもも把握されるようになったことに加え、活字を読む機会や会話の減少など、生活習慣や環境の変化による影響も考えられるとしています。
一方、こうした小中学生のうち、学校の「校内委員会」で、特別な支援が必要と判断されたのは28.7%で、有識者会議では「支援の検討自体がされていない児童生徒がいると考えられ、学校全体での取り組みやそれを支える仕組みが必要だ」としています。文部科学省は、有識者会議で具体的な対策を検討し、年度内に方針をまとめることにしています。(NHKニュース)
これは教員や家庭、社会の発達障害に対する理解と知識が高まってきたことが原因ではないかと思われます。教員目線からも「あぁ、今思えばあの子は発達障害だったんだな」というケースはかなり多く、過去では見過ごされていたことが、現在では対応されるようになってきたと言うことでしょう。
ただ、対応するとなると特別の対応が必要になり、それには別途労力と人が必要になります。しかしただでさえ教員が集まらない時代なのに、人の補充は困難です。結果的に今いる教員が長時間労働により対応する羽目になっているのが現実です。