2022年1月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。(Yahoo!ニュースより)
デジタル教科書、新年度から全小中学校に配布 まずは「外国語」から
紙の教科書をデータ化した「デジタル教科書」が新年度から、全小中学校に無償で提供される。文部科学省が、2024年度の本格導入に向けた実証事業として外国語(英語)で配布し、希望する学校の一部には、ほかの教科からも1教科分を提供する。紙との併存や費用のあり方などについて課題を洗い出す。
デジタル教科書は、紙と同じ内容をデータ化し、パソコンやタブレット端末で使う。学校教育法改正により、19年度から紙の教科書に代えて一部授業で使用できるようになった。文科省の有識者会議は21年3月、小学校の教科書改訂のタイミングとなる24年度からの本格導入を求める提言を出している。(元記事)
私も使っていますよ、デジタル教科書。ただ教員用だけで、それをプロジャクターで写して共有している感じです。教科書の内容に則した動画などが収録されていますので、指導する上では非常に便利です。現在は費用の加減で生徒のタブレット端末には入れていませんが、全ての教科書がタブレット端末に入ったら、動画などのデジタル教材を視聴できるだけでなく、生徒の荷物が少なくて済むので私はもっと推進したら良いのにと思っています。
ただ、この一件かなり急ピッチで事が決まりました。私の学校の方にもこの案内が来たのですが、回答期限の余裕がほとんどありません。即決を求められて、学校内で話し合う時間が十分に取れませんでした。
また、来年度も無償提供を受けれる保証がないので、今年度導入したはいいが来年度有料となった場合、混乱必至です。有料でも継続する場合、生徒・保護者に負担をお願いすることになり、さらにデジタル教科書をあまり使わない教員がいた場合「使わないのに、お金を取られている!」というクレームが入りますし、有料だから使わないという選択をしても「昨年度と指導方法が違う!分かりにくくなった!」というクレームが来ることが容易に想像できます。
是非とも、国にはやるからには今後も引き続き無償提供をお願いしたいと思います。
私はデジタル教科書があるなら、紙の教科書は不要だと思っている派です。教科特性もあるかもしれませんが。
教員免許更新制、7月に廃止へ 政府が法改正方針
教員免許に10年の期限を設け、更新講習を受けなければ失効する教員免許更新制が、今年7月に廃止される見通しになった。来週召集される通常国会に政府が提出する教育職員免許法の改正案に、廃止の日付について今年7月1日と盛り込む方針。これ以降に免許の期限を迎える教員は、更新手続きが不要になる。
教員免許更新制は、教員の資質確保を目的に第1次安倍政権時代に法改正され、2009年度に開始。無期限だった教員免許に10年の期限を設け、期限切れ前の2年間で講習を30時間以上受け、修了認定されなければ失効する。教員の不足や負担増の一因と指摘され、昨年8月、萩生田光一文部科学相(当時)が廃止の方針を表明していた。(元記事)
以前から報道されていましたが、ついに目処が立ったようですね。運用期間は10年を超えていますので、多くの教員が1回は経験し、人によっては2回更新講習を受けたことになります。元は教育再生会議から不適格教員(能力不足や資質不適格)の排除を掲げて教員免許更新制度が提言されましたが、制度が始まるとその文言は消えて「教員の資質向上」に変わって始まることとなりました。
私も1度免許更新しましたよ!夏休みに5日間、大学に監禁され、3万円ほどを取られます。むしろ3万円くれと言いたいですね。
記事内には紹介されていませんが、免許更新制度に変わる「新たな研修制度」を考えているそうです。何かさせる気満々ですね。本当にいらないのでやめてもらいたいところです。
大学入学共通テスト 数学1Aの予想平均点は38点、歴代最低の公算 自己採点集計
2022年度大学入学共通テストの受験生の自己採点結果の集計にもとづく予想平均点を駿台予備学校とベネッセコーポレーションが運営する「データネット」が1月18日昼過ぎに発表した。難化した科目が多く、昨年より急落する見通し。教科・科目別の予想平均点をみると、とりわけ数学の平均点が落ち込んでおり、「数学1A」(科目名の数字はローマ数字)は歴代最低となる可能性が高い。データネットは、受験生の自己採点結果のうち35万人の中間集計を速報した。それによると、国公立大の受験に必要な文系受験生の5教科8科目平均点(900点満点)を511点(昨年の推定値より41点低下、地歴と公民は1教科扱い)、理系受験生の5教科7科目平均点(900点満点)を515点(同57点低下)と予想している。(元記事)
今年も共通テストがおこなわれました。共通テストとなって今回が2回目の実施になります。今年の共通テストは、ただでさえコロナ禍で実施が大変な中、東大前刺傷事件やトンガの火山噴火に伴う津波、カンニングなど様々な事件がありました。
前回がさほど難しくなかった(センター試験とそこまで変わりがなかった)こともあり、平均点はやや高めでしたが、今回は予想通りの難化です。とはいっても、数学1Aの予想平均点38点は厳しいですね。国公立大学に行くなら7割・難関国公立大学なら8割欲しいと言われていますが、数1Aの影響で予想が難しくなってきました。
「平均点が低いということは、みんなできてないんだから気にするな。」と私は思いますが、当日の動揺をその後の試験に引きずる受験生も多かったでしょう。気持ちの切り替えって本当に大事ですね。
出願に関しては、駿台個別(2次)試験出願シミュレーションシステム「インターネット選太君」など各社からツールが配信されていますので、最大限利用して出願先を検討してみると良いでしょう。
親が低年収だと、子は学力だけでなく運動能力も低くなる」最新研究でわかった残酷な現実
親の収入や学歴は、子どもの運動能力と相関していることがわかってきた。筑波大学体育系教授の清水紀宏さんは「親の収入や学歴が低いほど、子どもの運動能力も低くなる傾向がある。こうしたスポーツ格差は深刻な問題になりつつある」という――。(元記事)
お茶の水女子大学の研究で、親の収入と子どもの学力が相関関係にあることは言われていましたが、今回の研究で運動能力にも相関関係があるのでは!?という内容の記事です。詳しい数値などは元記事をご参考にしていただければと思います。
昔であれば裕福な家庭は塾などの習いごとに行き、貧乏な子どもほど外遊びをしていたという印象でしたが、現代は違うようです。私の予想ではありますが、子どもの遊び場の減少とスマートフォンやゲーム機の普及に伴い、貧乏な家庭ほどそういった機器を使って子育てをして(それに夢中の間は子どもは静かにしている)、裕福な家庭はそれに危機感を持ち、お金を出して子どもをスポーツクラブに通わせるなどの対策をするようになったのでしょう。
近年の日本は、物価は高騰するのに収入は増えないため、共働き世帯が増え、子どもの面倒を見る時間が減少したこともその要因かもしれませんね。
私も常々思いますが、子どもにお金や物を直接与えるのではなく、お金の稼ぎ方を教えたり、子どもの能力を高めることに投資をしたいと思っています。そのために必要な支出については惜しみなく使いたいなと考えています。
大阪の府立学校『休校基準を緩和』感染確認で休校→今後は感染者や接触者だけ出席停止
1月27日、大阪・兵庫・京都では新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の適用が始まりました。期間は1月27日から2月20日までです。大阪府教育庁は1月26日、休校や学級閉鎖の基準を緩和する通知を府立学校に出しました。教育庁によりますと、これまでは学校内で新型コロナ感染が確認された場合、保健所による疫学調査が終わるまで休校としていました。しかし今後は、感染者や濃厚接触者だけを出席停止にして、学校活動は継続させるということです。ただし、直近の3日間にクラスの15%が感染したり濃厚接触者となったりした場合には、学級閉鎖となります。(元記事)
この記事は大阪府に関するものですが、全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進んでいます。それにともない、学校現場はどこも大変なことになっています。
大阪府では休校・学級閉鎖の基準が変更されたため、学級閉鎖・学年閉鎖・学校閉鎖になる学校は少なくなるかもしれません。しかし、感染のリスクは高まります。また、保健所が濃厚接触者追跡をやめているため、濃厚接触者の判定は学校の校医さんにお願いしている状態です。そのため、今まで保健所が行っていたような陽性者からの聞き取りを学校の教員がやっているような状態です。完全な業務追加ですね。
また、コロナに感染するのは生徒だけではなく、教員も感染します。学校をなんとか通常営業しても、教員が不足していては授業はできませんし、その他にも業務はあるので、他の教員にしわ寄せが行っている状態です。オンライン授業をするにしても、手間がかかります。「オンライン授業が見れません!音声が聞こえません!」などの電話がしょっちゅうかかってきます。教員全員が情報機器に詳しいわけではないので、これも一部の教員に仕事が集中します。
こんな状態ですが、給料は変わりません。仕事が増えたことにより、定時を越えることも多く。(というか、コロナ前から定時は余裕で超えていますが。)定額働かせ放題の学校では、ただただ教員の負担だけが増えるばかりです。
国立大協会、共通テストに「情報」追加 25年以降、6教科8科目に
国立大学協会は28日、オンラインで総会を開き、2025年以降の大学入学共通テストへの対応について、国立大の一般入試では新設教科「情報」(科目名は情報Ⅰ)を加えた6教科8科目を受験生に課す方針を決定した。「国立大の教育を受ける上で必要な基礎的能力の一つ」と判断した。共通テストの前身である大学入試センター試験で、04年から5教科7科目を原則として課す方針を掲げて以来の大きな変更になる。国大協の方針は義務ではないが、大半の国立大が従うとみられる。今回の決定を受け、各校は22年度中に「情報Ⅰ」の具体的な活用方法を決めて公表する。(元記事)
ついに、決まってしまいましたね。大学側が情報を試験科目に課すかどうかという、最終判断はあるものの、共通テストで情報が追加されることとなりました。
学校現場から言えることは「私立大学人気がより高まるだろうな」ということです。ハッキリ言って、今の指導内容はかなり多く、現行の内容ですら指導しきれない・生徒側の能力やキャパシティが足りないというのが現状です。すでに、現行の試験内容に限界を感じている生徒も非常に多く、教科を絞れる私立大学の人気は高いです。これに、さらに教科をプラスされると、より一層国公立大学に進学する生徒は減少する可能性が非常に高いです。
これを解決するには、既存の教科・科目の指導内容削減をするほかありません。ここにメスが入るのかどうか、今後注目していきたいところです。
ちなみに、情報を教えれる教員は非常に少ないです。数学や理科の教員が+αで取得していることはありますが、教員の確保も今後問題になるでしょう。