2022年10月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。
不登校の児童 初の20万人超 「コロナでストレス」影響も
全国の小・中学校で不登校だった児童生徒が、初めて20万人を超え、過去最多を更新した。
文部科学省が調査した、2021年度の不登校の児童生徒は、前の年度より20%以上増え、24万4,940人だった。
小中高校などのいじめの認知件数も過去最多となったほか、暴力行為の件数も増えていて、文部科学省は、「新型コロナウイルスの影響で、ストレスを抱える児童生徒が増えた」と分析している。(FNNプライムオンライン)
不登校の生徒が過去最多を更新。ついに20万人を突破し、しかも前年度比で20%も増加しています。学校で勤めている身としてもこの傾向はすごく感じていて、全学年で多くなったというのを感じます。しかし原因は様々ですが、新型コロナウイルスが影響したであろうと推測される事例も見られます。
確かに、マスクをつけての学校生活で、口元が見えず表情が分からないことによる、人とのコミュニケーションの難しさがあります。そして、学校生活での制約の多さ、コロナの陽性・濃厚接触による長期間の出席停止、学級・学校閉鎖などストレスを感じることも多いと思います。
あと、教員として保護者と接していて感じることではありますが、自分の子どもが不登校でも致し方ないと諦めたり、容認したりしている保護者が増えているとも感じます。過去のことを考えれば、絶対に学校に行かせようと保護者が引っ張ってでも学校に行かせていたこともあったでしょうが、今はそれがされていません。コロナ禍でちょっとした体調不良でも登校させないお願いをしていることもありますし、不登校に関する情報が調べれば出てくる時代になり、他にも同じ境遇の人がいることを知ると、不登校でも仕方ないのかと登校を強制するような保護者が減ったのではないかと推測されます。
小・中・高などの“いじめ”再び増加に転じ過去最多に 小中の“不登校”も過去最多を更新
2021年度に全国の小中高校などで認知されたいじめの件数と小中学校の不登校の件数が、いずれも過去最多になりました。 文部科学省の調査によりますと2020年度に全国の小中高校などで認知されたいじめの件数は51万7163件で前の年から15.6%減少と大幅に減りましたが一斉休校がなかった2021年度は再び19.0%増加して過去最多の61万5351件となりました。(TBSニュースデジタル)
先ほどの記事でも少し紹介されていましたが、いじめの件数も過去最多となりました。2020年度はコロナの影響で休校やオンライン授業が多発していた年代であるため、そもそも子ども同士の接触が少なかった年度です。そのため、数は減っていたのでしょうが、2021年度は休校やオンライン授業は極力辞めて対面授業を重視する方向に移った年度です。それもあって、1年間人との関わりが弱く、人との接し方が十分に育っていない状態の子どもも多く、いじめの件数の増加につながったのではないかと予想されます。
また、私個人としてはいじめの実態を調べるためのアンケートの実施方法も影響しているのではないかと考えています。これまでのいじめアンケートと言えば、紙に書くアンケートが大半でした。それが、コロナ禍でICT端末を活用する機会が急増し、いじめアンケートもGoogle formsやMicrosoft formsなどを活用する学校が増えてきました。紙に書くアンケートだと、心的ハードルが高く、例えいじめにあっていたり、いじめがあることを知っていても報告しないケースがあります。しかし、それがデバイス上となるとかなりハードルが下がるようで、些細なことでも報告するようになります。
今までは拾えていなかった声まで取りこぼさないということは、非常に意義があることだと思いますので、いじめの件数が過去最多になったとはいえ、認知できているのであれば問題ないのではと思います。
最近、ペーパーレスで紙のアンケートはほとんど行いません。行事のアンケートでもデバイス上でやると、今までなかったような、とんでもクレームの嵐になることがあります。(無記名だからばれないと思っているのでしょうが、こちらは誰が書いたか把握できているのに…。)
「主張が認められず残念」 JASRAC、音楽教室巡る最高裁判決にコメント
日本音楽著作権協会(JASRAC)に音楽教室から著作権使用料を徴収する権限があるか否かが争われた裁判で、最高裁判所は10月24日、生徒の演奏に関するJASRACの上告を棄却する判決を出した。音楽教室における生徒の演奏について、著作権使用料の徴収が認められなかった形だ。JASRACは最高裁の判決に対し「主張が認められず残念」としている。
訴訟はヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などによる団体が2017年、JASRACを被告として提起。JASRACが同年、著作物を公衆に聞かせるために演奏する著作権法上の権利「演奏権」を根拠に、音楽教室から受講料の2.5%を著作権料として徴収する計画を発表したことを受けての対応だった。
20年の一審ではJASRAC側の主張が認められたが、不服とした音楽教室側が控訴。続く二審では、教師が演奏したり、録音物を再生したりした場合は徴収の対象になるとしたものの、生徒の演奏については対象にならないとの判決が出た。JASRACはこの判決を承服できないとして、21年3月に上告していた。(IT media NEWS)
学校とは直接関係はありませんが、音楽教室とJASRACとの戦いです。「生徒の演奏」には著作権使用料の徴収が認められないとの判決が出ました。しかし、「音楽教室の講師の演奏」には著作権使用料が必要ということは変化ありません。個人的にJASRACやNHKのような徴収型ビジネス、既得権益でやっていける企業は好きません。
さて、学校は教育ということで著作権については比較的緩いのですが、それでも合唱コンクールや文化祭などで著作物を扱うときは気を使っています。特に最近では一人1台のICT端末を持つことが多く簡単にそのデータをシェアできる時代です。生徒一人一人が著作権について理解し、適切な運用をしてくれればよいのですが、そう簡単な話ではありません。学校としてはどこまでは許可するのかの線引きをしなければなりませんので、「例年通りの運用」では済まないことが多くなりましたね。
全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が
小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施されている「全国学力テスト」で全国トップクラスの成績が続く石川県で、ことしのテスト直前、多くの学校が授業時間を削り過去の問題を解かせるなどの「事前対策」をしていたことが、県教職員組合が行った調査で分かりました。
全国学力テストをめぐって文部科学省は行き過ぎた対策をしないよう求めていて、専門家は「抜本的な改善が必要だ」と指摘しています。
4月に実施されたことしの全国学力テストで、石川県は中学3年生ではすべての科目で平均正答率が全国1位だったほか、小学6年生でも「算数」が全国1位、「国語」と「理科」が全国2位となるなど、毎年、全国トップクラスの成績が続いています。(NHKニュース)
知ってた。というか、私もやってた。
毎年実施されている「全国学力・学習状況調査」ですが、その対策を全国トップレベルの石川県が行っているというニュースです。しかし、石川県(他の報道では他府県もニュースになっています)が矢面に立たされていますが。全国の小中学校の多くで対策はしていると断言しても良いでしょう。
だった、毎年ランキングが出されて、順位が思わしくないと叩かれるのですから、いい気はしません。それに全国学力・学習状況調査で行われるテストはクセが強いので対策しなければ高得点は難しく、逆にそのクセさえ慣れれば点数を取ることも容易です。そのため、自主的に対策に乗り出す教員もいますし、学校側から対策しろという指示がある学校もあります。
正直、ここまで対策が進むと本来の調査の意味が薄れてきます。本来は、この結果を受けて補いたい力を育てるための教育を考えるべきですが、テストの傾向を掴んで点数を取らせる方が圧倒的に楽なので、授業時間を削ってそちらに舵をきるという本末転倒な状態です。結果の非公表・テストの廃止も含めた議論が必要な時期に来ているのではないでしょうか。
私もブラック私学に勤めていたときは、ゴリゴリに対策するように学校から迫られていました。そして、その結果が評価にもつながりますのでもちろん対策させてもらいました。
小学校の採用倍率、1倍台が続出、全国平均は過去最低更新…教師人気は回復できるのか?
学生の「教員離れ」が指摘される中、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の特別部会が10月5日、教師の在り方に関する中間まとめを公表しました。9月9日の会合で部会長一任を取り付け、修正を加えたものです。
この日の会合では、2022年度公立学校教員採用試験の実施状況も報告され、小学校の採用区分を設けている57道府県・指定都市のうち約4分の3に当たる42県市で3倍を切り、17県市では1倍台という深刻な実態が明らかになっています。中教審では年内にも答申をまとめることにしていますが、これで本当に教師人気は回復できるのでしょうか。(大人ンサー)
徐々に今年度の教員採用試験の結果・倍率が明らかになってきました。大方の予想通り非常に低倍率の自治体が多くなりました。それもそのはず、国や自治体・教育委員会はこれを解決するための有効的な対策をほとんど打ち出していないからです。
ここまで不人気なのは給料面と過酷な労働環境が周知されているからです。やりがいがあったとしても、割に合わないのであれば敬遠されるのは当然です。それなのにやりがいの発信や、募集時期や募集方法の変更という一番の原因から目をそらした対策ばかり行う始末です。
不味い料理店がどれだけ広告を打っても、客は定着しません。