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2022年6月教育ニュースまとめ

2022年6月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。

休日の中学部活、地域移行を スポ庁会議、提言案大筋了承

 運動部活動の在り方を検討するスポーツ庁の有識者会議(座長・友添秀則日本学校体育研究連合会長)は31日、公立中学校で行われている休日の部活動を民間のスポーツ団体などに委ねる「地域移行」を来年度からの3年間で段階的に進める目標を掲げた提言案をまとめ、大筋で了承した。少子化が加速する中でも部活動を継続できる仕組みを模索する一方、長時間勤務を余儀なくされている教員の負担を緩和して学校現場の働き方改革にもつなげたい考えだ。

 提言では、少子化で部員が集まらず廃部や規模の縮小が増えている現状を問題視。学校単位で教員が指導する現行の仕組みの維持は「極めて困難」だとして、子供たちがスポーツに触れる機会を確保するため、地域単位での活動に改革する必要性を訴えた。休日の部活動の指導が教員の長時間勤務の一因となっていることからも、「早急な改革が急務」とした。

 移行の受け皿として想定されるのは、幅広い世代が参加できる総合型地域スポーツクラブやプロスポーツチーム、大学などの団体。

 すでに一部の地域では、外部人材を指導員として活用するなど改革を進めているケースもある。今回の提言では、令和5年度からの3年間を「改革集中期間」と位置付け、全ての都道府県で、山間部や離島を除いて7年度末を目標として移行を達成するとした。

 生徒らが出場する大会についても、地域単位での参加が認められるように資格や条件の見直しを求めた。スポーツ団体などで生じたけがの補償は、学校の部活動を対象とした日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度の対象外であるため、新たなスポーツ保険を整備する必要性も示した。(産経新聞

部活動改革は教員の働き方改革の最重要課題です。コロナ渦初期の休校や部活動停止で部活動が長時間労働の温床であったと認識した教員はかなり多いのではないでしょうか。その部活動が学校から離れようとしているというニュースです。

部活動が地域に移行すれば、子どもと教員の双方にとってメリットがあります。子どもたちにとっては選択肢が増え、やりたいスポーツがやりやすい環境になり、より専門的な指導を受けることができます。学校教員のほとんどはなんだかんだで素人ですからね。

教員にとっては休日にしっかりと休むことができるようになります。休日出勤の理由の大半は部活動です。(しかも、休日出勤なのに最低賃金を大幅に下回る手当しか付きません。)現にコロナ禍の部活動停止中は週休2日で休みを取ることができていました。当然のことなのですが、部活動がある限りそれは困難なのです。しゃーなしで顧問をしている教員にとっては非常にメリットが大きいです。

問題は費用面の負担と本当に地域移行が進むのかです。今まで学校教員のほぼボランティア(時給500円前後かそれ以下)で運営されていた部活動ですが、これを専門の方(部活動指導員)に移すとなるとそれなりの費用が必要です。果たしてこの費用を誰が負担するのでしょうか。国?自治体?保護者?また、教員が手を引くとなると中体連や高体連などの組織は誰が運営するのでしょうか(ちなみにこちらもほぼボランティアで運営しています)。大会等の運営側も負担するとなるとかなりの費用が必要です。まさか教員同等にボランティア価格でやってもらえると思ってはいないですよね?そんな額で引き受けてくれる人なんてほとんどいませんよ。

そして、指導する側の人員を本当に確保できるのかも怪しいです。先ほどの金銭面で合意できるかも問題ですが、そもそも地域にそんな都合のいい人材が眠っているのかも怪しいところです。地域に人材が見つからず、結局は今まで通りに教員に部活指導員をお願いする未来が見えなくもないですね。

個人的には休日の地域での活動中に起こったトラブル(いじめ等を含めて)はどちらが責任を持つのかも関心があります。はたしてどのようにこの話が進んでいくのか注目です。あと、休日の意向が進むだけで、平日は学校で指導することになるので学校から部活動顧問が消えることはありません

職員室で見る朝焼けに涙して~教員と家族から500件のSOS~

「毎週土曜日、職員室から朝焼けを見ます」
そう語った女性教員。育児と両立するため早朝に出勤して仕事にあたっているといいます。
「疲労が重なる中、用水路に落ちて、死にかけました」
残業時間を改ざんするのは産業医面談を避けるための“校長の親心”だと言われたという男性教員。一命を取りとめ、いまはうつで休職しています。
学校の先生は大変だと知ってはいたけれど、ここまでとは…。
NHKの情報提供窓口「ニュースポスト」に寄せられた500件の悲痛な訴え、そして、それでも“辞められない理由”とは。(NHKニュース

こちらは教員とその家族から送られるSOSを記事にしたものです。学校現場は過酷を極め、限界を超えています。おそらく、教員という仕事で無く一般的な職務内容で、転職が容易な仕事であれば、こんな過酷な環境で働き続けることは無いでしょう。これが教員という仕事の特殊なところです。「やりがい搾取」「特殊な専門性」が転職を邪魔するのです。

教員志望者と退職者・休職者が激増し、やっと社会が改革に動き出した感がありますが、時すでに遅しです。優秀な人材の多くは脱出に成功していて、現場は悲惨な状態となっています。早期に手を打っていれば、こんなことにはなっていなかったかもしれませんが、ここから挽回するには非常に時間がかかることでしょう。それに打つ手が弱すぎるのも気になります。本当に改善する気があるのか疑いますね

スマホは一斉に電源オフ、イヤホンも禁止 共通テスト不正対策を公表

今年1月の大学入学共通テストで、受験生がスマートフォンを使って問題を外部に流出させた事件を受け、大学入試センターは10日、不正防止策を発表した。試験開始前に監督者の指示で机の上にスマホを出させ、一斉に電源を切ってかばんに入れさせるほか、同事件でイヤホンが使われていたことから、イヤホンの使用禁止も明確化する。(朝日新聞デジタル

毎年何らかの不正が発覚する大学入学共通テストですが、次回の実施に向け不正対策が公開されました。ほとんどの受験生にとっては作業が増えて手間が増えただけではありますが、果たして効果があるのでしょうか?結局は不正を見抜けない限り何らかの不正行為は今後も続くことでしょう

最近のカンニングは古典的なものからデジタル機器を使ったものまで様々なカンニングが行われています。学校では不正行為を見つけることよりも、未然に防止することに力を入れていますが、大規模な会場で行われる共通テストのような試験ではそれも難しいかもしれません。

いっそのこと空港みたいに金属探知機を通らないと入れない試験会場にしたり、通信させないために妨害電波を飛ばすぐらい過激なことをしない限り不正行為を0にすることは難しいのではと思ったりもします。

入学金の二重払いになりがちな「追加合格」の減少目指し、私大入学定員の基準緩和へ

文部科学省は、学生の都市部への集中を避けるために厳格化していた私立大の入学定員の基準を、来春入試から緩和する方向で変更する方針を決めた。近年、入試の追加合格が増え、受験生が入学金の「二重払い」を余儀なくされるケースが目立っていた。文科省は、入学者数に関する大学の裁量を広げ、追加合格の減少を目指す。(読売新聞オンライン

私立大学の入学者定員の厳格化がはじまり、上位私立大学の合格率は急激に落ちました。それにより、今まででは合格していたような層まで合格できないようになり、高校としては難しい進路指導となっています。

この前後で上位の私立大学の偏差値は結構上がってしまいましたね。

また、私立大学側も定員をオーバーしてしまうと補助金をカットされてしまうので、どうやって定員ギリギリに収めるのかを苦慮していて、結果として入試日程を増やし、合格者を少しずつ増やしていき、補欠合格で微調整する戦略が取られています。その結果、高位の志望校の補欠合格をもらって飼い殺しに合いながら、低位の志望校の合格をもらい、入学金を支払いながら、最終的に高位の志望校の補欠合格が繰り上がって、二重に入学金を支払う問題が増えてしまいました。

今回の改革で入学定員が若干緩和され、1年間の入学者ではなく、4学年の総定員で判断するように変更されました。これで多少はゆとりが取れそうではありますが、大学としては毎回定員一杯まで学生を取りたいと思っていますので、あまり解決にはならない可能性があります。そんなことより入学金を身代金のように取る制度を規制した方が良いのではと思うのですが、これも大学側の貴重な収入源ですので難しいところです。

日程を多発することによる受験料商法も問題ですよね。関西圏ではK畿大学とかは受験料だけで尋常じゃない収入があります。

幼稚園児・小学生334人を誘拐する 福井県内9自治体に予告メール

いったい誰が何の目的で送りつけているのか、いま全国の自治体で誘拐を予告するメールが確認されていて、県内にも9市町に届いていることが分かった。「6月28日に下校中の幼稚園児、および、女子小学生334人を誘拐する」これを受けて、坂井市内のある小学校では27日、児童の安全確保のため集団下校の措置をとった。

坂井市教育委員会によると、23日夜、誘拐を予告するメールを受信。「6月28日に下校中の幼稚園児、及び、女子小学生334人を誘拐する」などといったことが書かれていた。坂井市教委は、小中学校から保護者に注意喚起のメールを送ったほか、警察に校区内のパトロール強化も依頼した。

また坂井市内の春江東小学校は午後2時半、児童の安全を守るため全校児童315人を集団下校とする措置をとった。誘拐が予告されている28日も、地域の見守り隊や教職員が付き添い集団下校が行われる。(福井テレビ

なんでや!阪神関係ないやろ!

これが言いたかっただけでではありません。まぁ数字だけ見たら完全に愉快犯の犯行だとは察しますが、学校に脅迫が来たときの対応についてご紹介しましょう。

学校や地域に対して、爆破・誘拐・傷害などの脅迫やその予告は割とあり、それらは管理職だけでなく一般教員にまで情報が行くことがあります。しかし、脅迫を受けたからと言って休校や時短、行事の中止を行うことは滅多にありません。愉快犯に対しては相手にしないのが一番ですので、それに反応してしまうと相手の思う壺です。

ただ全くの無警戒というわけではありません。爆破系であれば前日に不審なものがないかチェックしたり、誘拐系であれば見回りを強化したりと学校教員の負担は増えます。ただでさえ忙しいのに無駄な仕事は増やしてもらいたくないものですが、万が一に備えて行動しています。末端にとっては本当にいい迷惑です。

倉敷市の私立高校が「新制服」発表 組み合わせは1000通り以上 岡山

組み合わせはなんと1000通り以上です。岡山県倉敷市の高校が「デザイン」や「過ごしやすさ」を重視した新しい制服を発表しました。

 25日、倉敷市の倉敷翠松高校で開かれたオープンスクール。在校生が、2023年度以降の新たな制服をファッションショー形式でお披露目しました。

 初めて採用された女子用のスラックスの他、ブレザーの下にこちらも初採用のパーカー、さらにはハーフパンツまで。その組み合わせはなんと1000通り以上。重視したのは「デザイン」と「過ごしやすさ」です。(KSB瀬戸内放送

最後に制服に関するニュースを一つ。

岡山県の私立高校で組み合わせ次第で1000通り以上のバリエーションがある制服が発表されました。最近の制服事情はLGBTの対応もあって、制服が多様化進んでいます。記事や学校HPからは分かりませんが、男子スカートはあるのでしょうかね。女子のスラックスを導入する学校はかなり増えてきましたが、男子のスカートまで踏み込んでいる学校はかなり少数派です。

流石に1000通り以上となると、学校の教員側も把握できないことでしょう。ここまでバリエーションを増やすのであれば、いっそのこと制服を廃止した方が良かったのでは?と思ってしまいます。

今回、制服を提供するのはTwitterの投稿から察するにカンコー学生服でしょう。制服業界も大変ですよね。少子化が分かりきっているので、今後縮小傾向にある業界です。そんな中で成長していくためには客単価を上げる必要があります。今回のニュースはまさにその最たる例で、バリエーションを増やすことにより客単価を上げていく戦略ですね。今後このような学校を増やそうとシフトしていくことでしょう。

制服ってどうしても割高に感じますよね。正直UNIQLOとかの方が高品質・高機能で低価格だとは思っています。

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