2022年4月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。
実は教職員も任意加入のPTA 退会した先生の姿がもっと評価されたほうがいい理由
PTAは入退会自由な団体で、加入を義務付ける法的根拠はありません。以前は皆そのことを知らず、強制は当然と思われていましたが、「実はPTAは任意」と知られるようになり、ここ数年は退会や非加入を選ぶ保護者がだいぶ増えてきました。
それだけではありません。最近は、学校の先生や職員さんたちのなかにもPTAのやり方に疑問を感じ、退会や非加入を選ぶ人が少しずつ増えています。
PTAは「保護者(特に母親)の義務」という印象が強いですが、実は教職員も同様の面があります。先生や職員さんたちも同意がないまま会費を徴収されていることが多く、また学校によっては管理職だけでなく一般の先生たちにも活動強制が見られます。
しかも一般の教職員は、PTAの本部役員になることができない(想定されていない)ので、「やり方を変えたい」と思ってもできることはほとんどありません。退会や非加入を選ぶことが、ほぼ唯一可能なアクションといえるでしょう。
今回話を聞かせてもらったのは、実際にPTA退会や非加入を選んだ9人の先生たちです。誰に、どんな形で、それを伝えたのか? その後、何が起きたか? まずは、3人の先生の実例をお伝えしましょう。(Yahoo!ニュース)
PTAはParent-Teacher Associationの頭文字を取っていることは有名な話ではありますが、強制加入に近い状態にあるというのが実情ではないでしょうか。昨今の共働き家庭の増加により、保護者側のPTA不加入が増えてきたのは事実です。そしてその波は教員にも波及してきたという話題です。
学校によってPTAとの関わり方は様々です。特にPTA役員決めに担任教員が関わるパターンの学校だとかなり大変です。私自身、ブラック私学に勤めていたときはクラスで3名決めなければならないPTA役員が全く決まらず、クラスの保護者全員に3回ずつ電話をかけました。教員にとってもPTAの業務は激務で、ただでさえ忙しい業務をさらに圧迫する存在となっているのは事実です。
【ブラック校則】私立学校は子どもの権利が軽視されたままで良いのか?
大幅に改善の方向となった教師用の生徒指導に関するガイドブックにあたる「生徒指導提要」(改定試案)。
一番の課題は、この「生徒指導提要」(改定試案)に記載されている内容がどこまで現場に理解されるかだ、としたが、もう一つ大きな課題がある。
それが私立学校がどうなるか、だ。(Yahoo!ニュース)
東京の都立校のブラック校則が大きく取り上げられていますが、私立学校の校則はかなりブラックボックスです。それぞれの私立学校には教育理念があり、それに沿った教育が行われています。そのため、より細かな校則が決められていたり、逆に校則がほとんどなかったりと学校によって様々です。特に私立学校は宗教との絡みがある学校も多く、一般の公立高校よりは厳しく設定されていることも多い傾向にあります。
しかし、公立学校の校則見直しの動きを受けて、私立学校も遅れながら校則改定に動き出しているのは事実です。私自身、私立学校に勤めていますが、私立学校でも校則改定の大きな波を感じています。この校則問題、数年内に一気に動く可能性が高そうです。
【独自】入学式前に学生服届かず 社長が遅れの理由を説明
東京都内の中学校や高校の入学式を前に一部の新入生らに学生服が届いていない問題で制服を受注していた「ムサシノ学生服」の社長が7日朝、日本テレビの単独取材に応じました。保護者や新入生に謝罪したいと話すとともに「受注の予測が大きく外れた」と遅れの理由を説明しました。
この問題は東京西部の学校を中心に制服を販売する武蔵野市の「ムサシノ学生服」が受注した制服を入学式の直前になっても一部の家庭に届けることができていないものです。
7日朝、「ムサシノ学生服」の田中秀篤社長が日本テレビの取材に応じました。「本当に申し訳ないと思っています」田中社長はこのように述べ、制服が届かなかった保護者や新入生に対して謝罪の言葉を述べ、深く頭を下げました。
制服の発送が遅れている原因については学生服の受注数の予測が大きく外れてしまったことがあると説明しました。
「今年はコロナの影響もあるが、受注時期が後ろにずれていることと、私学の無償化でどちらの学校に生徒が入るか分からない、男女の人数制限がないので受注数が読めなかった」などと述べました。
また制服が届かないことに十分な説明がないとの指摘について田中社長は問い合わせに対応し調査する中でさらなる問い合わせへの対応ができなくなってしまったと説明しました。(日テレNEWS)
先に申しておきますと、私は学校の制服文化が嫌いです。特に制服業者と学校の癒着が疑われるような密接な関係は本当に嫌悪感すら感じます。制服自体を廃止したり、もっと安価で機能性のある制服を選べないものかと思います。
話はそれましたが、今回の問題はコロナの影響や、業者の技量不足もあるでしょうが、日本の受験シーズンにおける過密スケジュールが原因の一つと言えましょう。受験から入学までがどう考えても忙しいです。この辺りをもっとゆとりあるものに変えることができれば、今回のような問題だけでなく、様々な問題を解決できるのではと思います。
“休日の部活動を地域に移行” 有識者会議の提言案が示される
休日の部活動を地域に移行するための課題を検討するスポーツ庁の有識者会議で、これまでの議論をまとめた提言の案が示され、地域のスポーツクラブや民間事業者のほか、保護者会などが受け皿となって休日の部活動を実施することや、指導者の確保に向けて資格取得や研修の実施を促していくことなどが盛り込まれました。
部活動と学校現場の働き方改革を両立させるため、国は休日の中学校の部活動を地域のスポーツクラブなどに段階的に移行していく方針で、この課題を検討するためスポーツ庁が設置している有識者会議の6回目の会合が26日開かれました。
この中で、これまでの議論を踏まえた提言の案が示され、部活動は競技志向だけではなく、レクリエーション的なものなど、生徒の状況に応じてスポーツの機会を確保する必要があるとしています。
そして、休日の部活動を実施するための受け皿は、地域のスポーツクラブや民間事業者のほか、保護者会なども想定し、指導者の確保に向けては、資格取得や研修の実施を促し、企業やクラブチームと連携している例を参考にすべきだとしています。
さらに、大会の在り方については、生徒などの負担が過度にならないよう、全国大会は適正な回数にすべきで、自分のペースでスポーツに親しむ生徒が成果を発表する場も必要だといった指摘が盛り込まれています。(NHKニュース)
実現すれば教員の部活動負担が一気に軽くなるので注目の内容です。しかし乗り越えなければならない壁は非常に高く、そして多いです。
まず、引き受けてくれるところがあるのかというのがまず疑問です。後述の教員確保のところでも触れますが、教員の確保のための出費すら惜しむのが今の教育行政です。そんな状況なのに部活動の指導にあたる指導者をどれだけの賃金で雇うことができるのかは甚だ疑問です。そしてそれが対価として見合っていなかった時には、引き受け手がおらず、機能しないのではないかという心配があります。
また、大会の実施についても不明点が多いです。大会の主催は主に中体連や高体連です。その団体の運営は学校教員が行っていて、ほぼボランティア状態です。不健全ではありますが、そんな状態だからこそ運営できていた大会を適正な賃金を払って実施できるのか、また適正な賃金が払われるのかも怪しいです。
大きな改革ではありますが、これが実現できるかどうかはかなり不透明な状況ではないでしょうか。
末松文科相 教員確保へ 特別免許制度の積極活用など要請
厳しい教員不足の状況を受けて、末松文部科学大臣は、教員免許がなくても知識や経験がある社会人を採用できる制度の積極的な活用や、定年退職した教員の再任用などに取り組むよう、全国の教育委員会の教育長らに要請しました。
文部科学省は28日、都道府県や政令指定都市の教育委員会の教育長らが参加する会議をオンラインで臨時に開きました。
この中で末松文部科学大臣は、教員不足の状況について「今年度も昨年度と同様、依然として厳しい状況があると聞いている。あらゆる手段を講じて教師の確保に取り組んでほしい」と述べました。
そのうえで、教員免許がなくても知識や経験がある社会人を教員として採用できる特別免許の制度の積極的な活用や、教員免許を持っていても教職についていない社会人の任用、定年退職した教員の再任用などに取り組むよう要請しました。
また、末松大臣は優秀な人材を採用する必要があるとして、通常、大学4年の夏ごろに行われる教員の採用試験を大学3年で受験できるようにすることなども検討する考えを示しました。(NHKニュース)
違うそうじゃない。
さすが末松文部科学大臣、とんでもないことを言い始めましたね。教員不足の1番の原因は「教員ができる人が少ない」のではなくて「教員という仕事をしたくない」からであって、その主な要因は「待遇の悪さ」と「労働環境の悪さ」です。この1番の問題点を解決せずに、資格面を緩めたところで根本的な解決にはならず、教員の質の低下が懸念されます。
ちなみに我がホワイト私学ですが、正規教員(専任教員)の募集を出せば、超高倍率になります。そうです、待遇や労働環境が良ければ人は簡単に集まるのです。文部科学省もこの点を早く認めてしまい、待遇アップと労働環境の改善に取り組まなければ、良い教員はどんどん私立学校に集まってしまいます。
教員の長時間労働 “子どもの教育に影響及ぼすおそれも”
長時間の残業をしている教員ほど準備不足のまま授業に臨んだり、いじめを見つけられるか不安に思ったりしている割合が高いことが小中学校の教員を対象にした調査で分かりました。
調査をした研究者は、教員の長時間労働が子どもの教育に影響を及ぼすおそれがあると指摘しています。(NHKニュース)
教員の本来の職務は子どもたちへの教育です。しかし、長時間労働が続いた結果、何かを削減しないと立ち行かない状況に陥ってしまいます。そこで削減されてしまうのが授業準備です。本末転倒ではありますが、真っ先に削減しても文句を言われにくいのがここなのです。授業のクオリティが下がっても生徒からクレームはあまり出てこないのもありますし、準備不足でもなんとか耐えれてしまうのも原因でしょう。
日本の教育の質をこれ以上下げないためにも、授業以外の業務を削減することが急がれます。しかし、文部科学省に予算を取ってくる力がないのか、それともお金をかける気がないのかは不明ですが、まだまだ時間がかかりそうです。