先輩が、大阪で講師登録をしたいらしいんですけど、どうやったらいいんですか?
大阪と言っても4つの自治体(教育委員会)があって、それぞれで講師を募集していますよ。それぞれちょっとずつ違いがありますので、ご紹介しますね。
講師登録とは?
各自治体・教育委員会では、教員採用試験を実施し、正規採用の教員を採用しています。しかし、正規採用だけでは十分な数の教員を確保できておらず、非正規雇用として講師を募集しています。その募集に応募・登録することを講師登録と言います。
講師登録の流れ
- 必要書類を用意して、インターネット・郵送・持参などの方法で各自治体の教育委員会に提出する。
- 教育委員会がその情報を元にデータ入力され、講師の希望者一覧に登録される。
- 欠員等があった場合、その一覧から担当者(校長等)が選び、応募者に連絡がある。(拒否権あり)
- 学校に伺い、校長や教科の担当者と面談をする。このときに採用は決定するが、その場で採用を言い渡されるか、後ほど電話されるかは学校次第。採用の場合は今後の流れや準備などを連絡される。
大阪府教育委員会の講師登録
大阪府の講師登録にはA登録とB登録があり、それぞれ以下のように分かれています。
(1)A登録
登録申込み時において、以下のアまたはイのいずれかに該当する場合をA登録とします。
ア 公立学校における講師等(注1)としての実務経験(注2)が、登録者となる年度の前年度末から遡って5 年の間に、通算 24 月(注3)以上ある場合
(注1)講師等とは、講師、養護助教諭、助教諭、臨時講師、産休臨時講師、育児休業臨時講師、育児休業任期付講師、 非常勤講師などをいいます。
(注2)校種・教科の別は問いません。
(注3)申請する時点で、登録者となる年度の前年度の末日までの期間で任用されている場合は、その期間を積算することができます。なお、1 日でも勤務のある月は、1 月として計算します。
イ 公立学校で正規職員としての教諭・養護教諭歴を有する場合
(2)B登録
上記、ア、イ に該当しない場合を、B登録とします。
きっとA登録の方が優遇されるんだろうなというのは誰の目からも明らかですよね。とは言っても、新卒からしばらくはB登録になると思いますので、B登録も結構な数いそうです。
なお、一度登録すると2年間は有効で期間中は自動更新です。B登録からA登録への変更は再度登録しなおす必要がありますので気をつけましょう。
書類の入手方法と受付方法
書類は窓口配布、郵送による請求、ホームページからのダウンロードの3つの方法がありますが、圧倒的にホームページからのダウンロードが楽なので、こちらから入手しましょう。
受付方法はネット非対応です。郵送による受付か窓口での受付になります。特に質問などがなければ、郵送の方が楽ですね。
大阪市教育委員会の講師登録
大阪府のような登録分けはありません。登録さえ完了すれば、あとは待つのみ。
欠員等が生じると、担当者から電話連絡があり、いきなり採用となります。その後、健康診断(※当日、教育委員会がしていする検査機関での受診も可能)を受付で提出します。そうすると、担当者から電話連絡があり、採用予定の学校園についての連絡があります。そして、採用予定の学校園の校長や教頭との面談の後、勤務開始となります。
なお、登録期間は大阪府とは違い、登録から1年間ですので気を付けましょう。
書類の入手方法と受付方法
結構原始的です。講師登録票はHP上にありますが、受付窓口にもあります。ただし、履歴書は写真の添付が必要ですので、HP上で全てを入手し、準備しておくのが良いでしょう。受付方法は受付窓口のみです。インターネットや郵送はできませんのでやや面倒ですね。まぁ受付窓口が、大阪市北区中之島で立地は良いので良しとしましょう。
堺市教育委員会の講師登録
大阪府のように登録が分かれていることはありませんが、堺市の教員として的確かどうかをチェックする書類選考があります。まぁ、合格の場合通知もされませんので、ほとんどの場合大丈夫でしょうけど。登録さえ済めば、あとは待つのみです。
お声がかかれば、面接を行い、合格であれば採用される流れです。
書類の入手方法と受付方法
講師登録票が堺市のHPにありますので、そちらから入手します。それに記入し、堺市教育委員会事務局に持参か郵送することになります。
また、電子申請システムによる登録も可能ですので、こちらの方が楽ですね。ネット上で全てが完結しますので、こちらの方がオススメです。
豊能地区教育委員会の講師登録
登録は3市2町(池田市・箕面市・豊中市・能勢町・豊能町)の全てに行われます。なお、登録は2年間有効です。基本的には他の3自治体と同じです。登録が済めばあとは待つだけです。ただ、豊能地区は教員数もあまり多く無いので、結構お声がかかるまで時間がかかるかもしれません。
書類の入手方法と受付方法
講師登録申込書は豊能地区教育委員会のHP上にありますので、そこから入手しましょう。
受付方法は豊能地区教育委員会の電子申込システムがインターネットで完結して便利です。その他、各市町の教育委員会窓口への持参か郵送でも可能です。
教員採用試験での優遇等(令和4年度試験の実績)
講師登録をするうえで気を付けたいのは、教員採用試験での優遇です。自治体によっては優遇を受けやすいところもあるので、講師登録の時点からよく考えて登録しましょう。
大阪府教員採用試験
大阪府内の公立学校にて常勤講師を1年以上経験すると一般選考教職経験者枠として受験できます。しかも5年未満で10点、5年以上で20点の加点がされますので、結構有利に立ち回れます。ただ、筆記試験の免除はありませんので、そこは頑張らなければなりません。
大阪府内の公立学校が対象ですので、大阪府・大阪市・堺市・豊能地区のどこで講師をしていても対象ですが、常勤講師のみであることには気をつけましょう。
また、一般選考の中で講師経験者加点がされるだけですので、講師経験者の合格率は不明ですが、新卒に対して有利であるのは確実です。加点はされるが、時間が無くて勉強の時間が取りにくい講師と、加点はされないが、時間は十分にあって勉強の時間が取りやすい新卒との戦いです。
大阪市教員採用試験
大阪市の優遇が最も複雑で難解です。
講師が使いやすいものとしては、一般選考〔教職経験者特例〕〔大阪市立学校現職講師特例〕〔講師等経験者特例〕の3つがあります。正規雇用の教諭などを含むものと混ざっていますので、今回は講師のみに関わるものを抜き出しています。
〔教職経験者特例〕
大阪市立学校園に、正規任用の教諭等として通算2年以上在職経験がある人が対象になります。
この「等」がポイントで、以下のように定められています。
※ 教諭、講師等の名称に関わらず、期間の定めのない雇用形態(任期付き採用や臨時的任用の場合は除く。)の職が、教諭経験者特例の対象となります。
すなわち、講師でもOKです。ただし、「大阪市立学校園」以外や、「任期付き」や「臨時的」が対象外です。産休や育休の代替などですね。この点は気を付けましょう。
ただ、この教職経験者特例は、採用試験を通過した正規教員が受験する特例と同じですので、その優遇の良さが分かります。この特例に当てはまると、第一次選考のうち筆記試験が免除されて面接試験のみになります。
〔大阪市立学校現職講師特例〕
出願時点で、大阪市立の学校園において、常勤講師、非常勤講師又は習熟等担当講師として在職している人が対象になります。大阪府とは違い、非常勤講師も対象になっているのもポイントです。
この特例に当てはまると、第一次選考のうち筆記試験が免除されて面接試験のみになります。さらに、面接試験の点数に所属する校園の評価が反映されます。これは結構重要ですね。余程評価が悪くない限り、一緒に働いてきた仲間として採用されてほしいと願うことでしょうから、良い評価をもらえます。教職経験者特例に当てはまっていたとしてもこちらの方がメリットが大きいと思います。
〔講師等経験者特例〕
国公私立の学校園において、教諭、常勤講師、非常勤講師、会計年度任用職員又は非常勤嘱託員として、通算2年以上在職経験がある人が対象です。大阪市以外の講師はこちらを受験することになります。
この特例に当てはまると、第一次選考で出題された問題のうち、思考力・判断力を測る問題のみを解答します。要するに教職教養の免除ですね。
どの特例が有利か?
3つの特例の共通点として大阪府のように加点はありませんが、試験の免除があります。
また、大阪市の講師が優遇されやすいことが分かりますね。令和4年度採用の結果から、合格率は〔大阪市立学校現職講師特例:25.2%〕≧〔教職経験者特例:24.1%〕>>〔講師等経験者特例:13.5%〕となっています。特に講師等経験者特例は、〔特例なし:17.7%〕にすら合格率で及ばない状態ですので、大阪市の教員採用試験を受験するなら大阪市で講師登録すべきだと思います。
堺市教員採用試験
〔現職対象選考〕というものがありますが、大阪府内の学校は除きます。ですので、こちらは使えないことが多いでしょう。使うなら〔講師対象選考〕です。
「堺市立学校園で講師、養護助教諭又は実習助手(期限付き任用を含む) としての勤務経験(非常勤(会計年度任用職員)としての勤務経験を含む)があること(任用期間は問わない)。 」というのが条件です。常勤・非常勤を問わないのは良いですが、堺市立学校園に限定されています。
講師対象選考で受験する場合、筆答試験が免除され、面生試験に講師をしている学校からの講師評価が加わります。余程のことがない限りプラスに働きますが、日頃の働き方にはより力が入りますし、アピールも重要になってきます。
この他で堺市を除く大阪府内の学校園の講師に対する特別選考はありませんので、堺市で教員をしたいなら、堺市で講師登録する方が良いですね。
〔一般選考〕が21%の合格率に対して、〔講師対象選考〕は15%しかありません。講師評価もされているのにこの合格率は低いですね。いっそのこと一般枠で受験するのもありですね。
豊能地区教員採用試験
常勤講師等経験者対象選考というのが行われています。対象者は「大阪府内の国公立学校で講師(常勤に限る)経験が通算3年(36ヶ月)以上の人」もしくは「豊能地区の公立学校で講師(常勤に限る)経験が2年以上の人」です。
常勤講師等経験者対象選考で受験する場合、筆答試験が免除されます。加点や講師評価などは行われません。豊能地区で講師をしていない人でも恩恵を受けやすいのが特徴ですね。ただ、非常勤講師は対象にはならないので気をつけましょう。
ただ、常勤講師等経験者対象選考の倍率は14.9倍と非常に高いです。一般が5.3倍、現職教諭3.4倍、大学推薦1.9倍であることを考えるとかなり厳しいですね。いっそのこと筆答試験を受けて一般枠で行った方が良いまでありますね。
どこで講師登録するか迷っている方へ
講師経験者が教員採用で有利になる自治体
- ◎大阪市
- ◯大阪府
大阪市は倍率が明らかにされていますが、特例なしの一般受験よりも合格率が高くなっていることが分かります。筆答試験も免除されますし、大阪市で教員を目指す方は、大阪市で講師登録することを強くオススメします。
また、大阪府も一般枠の中で加点されますので、他の受験者に対して有利です。ただ、筆記試験は免除されませんし、大阪府の講師登録でなくても加点を受けられますので、大阪府で講師登録をする必要性はありません。
講師として採用されることを優先する
- ◎大阪府
- ◯大阪市
講師登録してもお声がかからなければ採用されません。ですので、教員数が多く空きが出やすいところで登録することで採用される確率を高めることができます。そうなると、大阪府と大阪市は教員の数も多くて採用の可能性は高まるでしょう。
また、講師登録の併願も可能です。その気になれば4自治体全てに登録することも可能ですので、気になる自治体は併願しても良いですね。私も大阪府と大阪市を併願した結果、登録から2週間ほどで大阪府の方からお声がかかりました。(年度途中の登録です。)
講師登録の注意点
教員採用試験を意識する
講師のままで終わろうとする方はあまりいないでしょう。その後の教員採用試験を見据えた講師登録が重要です。どこの自治体で講師登録をするのかも重要ですが、雇用形態にも気をつけたいところです。前述の通り、常勤講師しか優遇されないところや、常勤講師でも任期付は不可なところもあります。また、講師をしていた教科・校種でしか優遇を受けれないというところもあります。必ず、詳細を確認しておきましょう。
一般校だけとは限らない
公立にも様々な学校があり、お声がかかるのは一般校(小中高)だけとは限りません。特に多いのは特別支援学校です。特別支援学校の場合、特別支援学校の教員免許を持っていなくても指導できるのです。
私も、公立の一般校からお声がかかるまで4つの特別支援学校からお誘いを受けました。学校数は一般校より少ないのですが、それだけ人手不足なのです。お声がかかったからと言って自分の希望する校種とは限りません。
超進学校からお声がかかることも
逆に大阪でも有数の超進学校からお声がかかることもあります。「えっ、自分にそんな学校の生徒、自分が教えても大丈夫なの!?」と思うかもしれませんが、数は少ないものの可能性としてはあります。めちゃくちゃ勉強する必要がありますが、滅多にない良い経験になりますよ!
お断りもできる
自分の希望に合わない場合お断りすることもできます。雇用形態や校種が合わないと、自身の人生プランに悪影響があることもあります。せっかくお声がけいただいたからと無理に受けないことも選択肢です。
これが今後の採用に悪影響が出るかは不明ですが、私の場合は登録から2週間の間に間に支援学校4校と一般校1校から連絡があったので、悪影響は無かったように思います。
最後に
大阪府で教員として働くなら講師登録は有力な選択肢です。同じ大阪府であっても4つの自治体によって、それぞれ少し違いますし、教員採用試験での優遇に関してはかなりの違いがあります。是非とも、ご自身が有利になるところを選んでもらえればと思います。
講師登録はお声がかかるまで待たないといけないというデメリットはありますが、まあまあ採用率は高いので大阪府で教員を目指すなら登録してみてはいかがでしょうか?