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2021年7月教育ニュースまとめ

2021年7月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。(NHK NEWS WEBより)

大学入試センター、英語民間試験などの導入延期で約6億円の損害賠償

概要

今年度から開始した大学入学共通テストでは当初「記述問題の導入」「英語の民間試験の活用」が目玉とされていましたが、どちらも延期されました。それに伴い、大学入試センターは関連団体への損害賠償と損失補償として、5億8900万円を支払いました

筆者の意見

ただでさえ、受験生や教員を含めた学校現場を右往左往させておいての延期です。英語の民間試験の導入に向けて、学校もその対策や実施を勧めていたという背景もありますので、家庭や学校にも補償してもらいたいところです。それでなくても、英検はどんどん値上げを続けていますので、家計への負担は大きいです。以下に高校生が受験するであろう1〜3級の検定料のここ5年間の上げ幅を載せておきます。

  • 1級(本会場) ¥8,400→¥12,600〈+¥4,200〉
  • 準1級(本会場) ¥6,900→¥10,700〈+¥3,800〉
  • 2級(本会場) ¥5,800→¥9,700〈+¥3,900〉
  • 2級(準会場) ¥5,400→¥6,500〈+¥900〉
  • 準2級(本会場) ¥4,500→¥9,200〈+¥4,700〉
  • 準2級(準会場) ¥4,100→¥5,800〈+¥1,700〉
  • 3級(本会場) ¥3,200→¥7,900〈+¥4,700〉
  • 3級(準会場) ¥2,800→¥4,800〈+¥2,000〉

共通テストは3教科以上で1万8000円、2教科以下で1万2000円と据え置かれていますが、今後値上げされてはたまったものではありません。本来であれば払わなくても良かったはずの損害賠償ですので、来年度以降は計画通りに進めてもらいたいものです

有識者会議、大学入試共通テストで英語民間試験と記述式問題の導入は困難と結論づけ提言

概要

大学共通テストの話題が続きますが、文部科学省の有識者会議が2025年度以降の英語民間試験と記述式問題の導入について、地域間格差や経済格差があることや、公正な採点体制の確保が難しいとして、実現困難と結論づける提言を文部科学大臣に提出しました。文部科学省は夏にも、正式に導入の断念を決定する予定です。

筆者の意見

そりゃそうでしょ」とみなさん思っていたことでしょう。学校現場でもみなさんそう言っていました。

大阪としては英検導入は有利な側で、結構いろんなところで受験できます。それに対して受験することすら一苦労な地域もありますので、公平性には欠けていました。そして、経済的な問題はかなり大きく、数うち当たる作戦で全日程受験すればそれだけチャンスは広がります。問題によって当たり外れがあり、特に記述や口頭試験では自分の得意なところに当たれば、多少実力が伴っていなくても突破できます。しかし、前述のように検定料が尋常じゃなく高いので、全日程受験できるような経済的に余裕のある家庭と、そうでない家庭ではかなりの差が生まれてしまいます

また、記述式も公平性に欠けると思っていました。学校でも1人の教員で採点するならまだしも、2〜3人で採点する定期試験や10名弱で採点する中学や高校入試では、採点基準を揃えるのにすごく苦労します。特に、字が汚い生徒をどうするかで、その都度みんなの手を止めて協議したりしています。それをあれだけの大人数が受験する共通テストで統一するには至難の技です。まぁ当然と言えば当然の結果に落ち着きましたので、文部科学省には現行の方法をベースに改良してもらえればと思います。

教員免許更新廃止へ

概要

文部科学省は10年ごとに教員免許を更新する「教員免許更新制」を廃止する方針を固めました。今後は審議会などの議論を経て、決定する見通しです。

免許更新制は教員の資質能力の保証を目的に2009年度からスタートして、現在に至ります。更新には30時間以上の講習と3万円程度の受講料が必要となっていましたが、その負担が大きいことが問題になっていました。また、現場の意見としても肯定的な意見が少なかったこともあり廃止する方針となりました。今後はオンラインでできる研修を活用するなど、別の方法を検討するようです。

筆者の意見

私も1度更新していて、夏休みに5日間大学に通い続けました。もちろん補助は出ませんので、3万円は自分のポケットから消えていきました。選ぶ大学によっては有意義な時間になるとは思いますが、私の同僚が行った大学では「5日間で別々の先生が同じ内容の話をしていただけ。しかも、大学時代に聞いた話と同じ。」という意見もあり、有意義な時間ではないものも多くあります。

私が行った大学は、その大学の特色が出ている内容でしたので結構楽しかったですよ。確かに講義系は苦痛ですが、実習系は楽しくできるものが多いです。

大学はこの制度で利益が出ているのかは謎ですが、教員視点でいえば夏休みだろうと部活動などの仕事はありますし、2学期に向けて授業準備をしたい時期です。そこを拘束して、しかもお金まで持っていかれる制度は納得しづらいものがありました。今後なくなるということで現場は嬉しいですが、違うものに以降するようなので、現場としてはまだまだ気が抜けません。(完全に何も無くしてくれればいいのに…。)

文部科学省、全5歳児に教育を検討

概要

文部科学省は、幼稚園や保育園を卒園したあと、小学校にスムーズに接続できるように5歳児の教育の検討を行うことを決めました。課題としては、塾へ通わせなくてはという保護者へのプレッシャー障害のある子どもへの対応指導するための専門性が挙げられています。

筆者の意見

スムーズに小学校に接続したいという文部科学省の気持ちも分からなくはないのですが、どんどん前倒しになっていくのが気になります。ただでさえ、高大連携や中高一貫教育、中1ギャップ、小学校の英語教育など接続を意識した前倒しが行われています。5歳児となると、同学年でも4月生まれと3月生まれでの1年の差が与える影響が大きく、早生まれ側の自己肯定感を下げることに繋がりかねないということが懸念されます。

また、ただでさえ大変な幼児教育の現場をさらに酷使することにも疑問です。それ専用に指導者を増員するのであればまだしも、おそらく文部科学省はそこまでしないでしょうから、現場は大変です。

さらには親目線からも行かせたい保育園や幼稚園、子ども園に確実に子どもを預けることができるのであれば良いのですが、希望の場所に預けることができていない現状を考えると不公平感があります。5歳児教育よりも先に解決しなければならない問題があるのではないかというのが私の意見です。

文部科学白書、「ICT活用が不可欠、教員の指導力向上を」

概要

今年の文部科学白書がまとまり、オンライン学習の更なる充実と教員の指導力向上を図ることが記されました。子どもに対しては一人ひとりの子どもに合わせた教育の実現にはICTの活用が不可欠だとし、児童や生徒が理解度に応じて、難易度の異なるテストを受けられるオンライン学習システムを活用することも挙げられました。また、教員に対しては教員の指導力向上のためのオンライン研修プログラムを作成するとしています。さらに教員志望の学生には大学等の教職課程にタブレット端末を使った効果的な指導方法やデジタル教材の作り方などを学べる科目の新設を盛り込んでいます。

筆者の意見

また教員の研修が増えたか。端末代は出してくれよ。」というの私の意見です。現在、ICT教育を進めるにあたり教員は自分で調べたりしてその力を伸ばしてきました。それを今回、半ば強制されることとなります。はっきり言いまして、生徒間の情報機器活用能力以上に、教員間の差の方が大きいのが現状です。私は情報機器が好きな方で自分から進んで様々な活用方法を勉強していますが、得意でない人は全くの手付かず状態です。得意な人にとってはあまり得るもののない時間になるのではないかと心配です。

また、学校によって教員へのサポート体制も違い、ICT端末がレンタルで自由に使えない学校もあれば、ICT端末の費用を学校が出してくれるところもあり、環境の差が大きいです。さらには、癒着まみれの企業から渡される無駄に高価な謎の端末も存在しますので、レンタルだから教員の懐が痛まないと安心もできません。正直、ICT教育をするのであれば、タブレットならばiPad一択です。できれば教員用はiPadAir4以上+ApplePencil第ニ世代が良いのですが、贅沢でしょうか。

ちなみに我がホワイト学校は自分用の端末を買っても全額学校が払ってくれます。ありがたや。

国として率先してICT教育を進めるからには、どの学校でも一定以上のICT教育が行われるように、機器の配備の面や指導力の面でもサポートできる体制を整えてもらいたいと思います。また、教員志望の学生にも端末を買わせるのであれば、既存の学割+国からの補助をしてあげるべきだと感じています。

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