2022年2月にあった教育に関わるニュースの中から気になったものを、現役教員の筆者の視点からお伝えします。(Yahoo!ニュースより)
公立小学教員採用倍率2.6倍 2年連続で過去最低更新
文部科学省は31日、2021年度採用の公立小学校の教員試験の倍率が前年度比0・1ポイント減の2・6倍となり、2年続けて過去最低を更新したと発表した。中学校も同0・7ポイント減の4・4倍に低下し、バブル景気の影響で民間就職が好調だった1991年度に次ぐ過去2番目の低水準だった。高校の倍率は6・6倍で前年度比で0・5ポイント上昇したが、受験者数は2万6163人と過去最低だった。文科省は「倍率の低下で質の確保が難しくなっている地域もあると聞く。教員の魅力を高める取り組みを続けたい」としている。(元記事)
「教員になりたいという人の減少」と「教員の不足による募集増」が主な原因でしょう。
近年、学校教員の劣悪な労働環境ばかりが報道されていて、教員の魅力をプッシュするような情報が耳に入ってきません。そんなこともあって、「学校教員=ブラック」というイメージが世間に広まっています。私自身、現状の教育現場で自分の子どもが公立の教員を目指したいと言い出したら、一旦反対するかもしれません。それほど魅力のない職場となっているのが現状です。
魅力ある教育現場にするためには、魅力の発信ではなく、環境の改善が急務です。どれだけ魅力を発信したところで環境が改善されなければやりがい搾取でしかありません。まずは、仕事量の削減と人員増(事務職員も含めて)、待遇の大幅改善が急務です。
給料を1.5~2倍にして、誰でも年収1000万円もらえるような職業にすれば、志願者数は二桁になると思うんですけど、まぁやらないでしょうね。
「教師不足」2558人 公立学校、昨年の始業日時点 文科省
文部科学省は31日、公立学校の「教師不足」の実態を初めて調べたところ、2021年度の始業日時点で2558人の不足が生じたと発表した。5月1日時点でも2065人が不足。小学校では教頭などの管理職が学級担任を代替したり、中学校や高校では教科担任の不足により一時的に必要な授業が行えなかったりする影響があった。調査は、都道府県や政令市の教育委員会などを対象に実施。自治体が配置を計画した教員数に対する欠員数を「教師不足」として集計した。始業日時点の不足は、小学校1218人、中学校868人、高校217人。教師不足が生じた学校の割合は、小学校4.9%、中学校7.0%、高校4.8%に上った。特別支援学校の不足は255人で、学校の割合で見ると13.1%に及んだ。(元記事)
全国の公立の小学校・中学校・高校・特別支援学校の数は36,000強です。2558人ということは、割合としては7%ほどの学校で教員が不足しているという計算になります。
年度途中での教員の募集は困難を極めます。無職のまま講師のお声がかかるまで待っている人なんて、ほぼいませんからね。そのため、人数不足で新年度をスタートすると本当に人の確保が難しくなります。
欠員を予想して、教育委員会が補充要員を年初で一括確保し、欠員が出たらそこに送り込むシステム。(待機中ももちろん給料を支払う。)ということでもしない限り、年度途中での人員確保は難しいでしょう。もしくは、多少人が欠けても持ち堪えれるように、必要教員の1.2倍ぐらいの教員を各学校に配備しておくなど、余裕ある人員配置を行なってくれると良いのでしょうが、それは一向にやってくれませんね。
そもそも教員の不足人数は2558人ごときではないというのが体感です。本当にそれだけの不足なんでしょうかね。個人的には各校で各学年1人ずつの合計3人ぐらい不足していると感じるので、適正な仕事量にするためには、10万人ぐらい不足しているのではないでしょうか?
教員が不足しているのに、採用試験の倍率は1倍を超えています。この点は矛盾を感じるかもしませんね。「足りてないなら採用しろよ」と思われることでしょうが、教育委員会の言い分としては「教員の質の確保」に尽きると思います。
教員の質を確保したいなら、待遇を良くしたほうが何倍も優秀な教員を採用できるんですけどね。もうすでに、各自治体の合格最低点はひどいことになっています。
小中学校担任の1割が「臨時教員」 文科省、綱渡りの実態を初調査
2021年5月1日時点で全国の公立小中学校の学級担任を務めていた教員のうち、都道府県や政令市などの教育委員会が実施している採用試験に合格して登用された「正規教員」は約9割にとどまり、約1割は立場が不安定な「臨時教員」だった。文部科学省が31日、初の調査結果を発表した。義務教育の現場が「臨時」頼みになっている実態が改めて浮かび上がった。(元記事)
本来、正規雇用の教諭でないかぎり担任をすることはありません。しかし、人手が足りないのです。そのため、非正規雇用である臨時教諭(常勤講師)に担任をやらせているのが1割にも及ぶという驚きの記事です。
記事によると特に特別支援学級の非正規率が高いようですね。支援学級ではありませんが、私も支援学校に勤めた経験があります。支援学校の場合だと複数教員が1クラスの担任をすることが多いので、2割ぐらいが非正規ということも。支援が必要な生徒こそ、専門知識をしっかりと備えた正規教員と思うのですが、今のシステムではそうなっていないのが現状です。
教員の採用に関するニュースを3本連続してお伝えしましたが、教員の働き方に関する改革は一向に進みませんね。「それじゃないんだよ。」っていう謎の改革はちょくちょくあるんですけど、本質を突くような「仕事の削減」「教員の増加」「待遇の改善」には一向にメスを入れようとしません。
「部活動は全校外部委託します!」「残業はさせません!給特法は廃止して、残業代は1.5倍ましで支給します!」「基本給も増やします!」これだけで、日本の教育問題の大半は解決しそうなんですけどね。全部お金で解決できるんで予算付けてください!
「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」の情報提供を開始
株式会社AXTが運営する発達障害・グレーゾーン専門の学習塾「個別指導のコーチング1」は2022年2月より「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」の情報提供を開始した。同社は2020年より全国で発達障害・グレーゾーン児童向けの中学受験・高校受験対策を実施しており、その中で各都道府県の発達障害・グレーゾーン児童に理解がある学校情報を蓄積してきた。これらの情報を中学受験・高校受験における進路選択に有効活用してほしいとの思いから、今回「発達障害・グレーゾーン受け入れ私立中学・高校(全国版)」を提供するに至った。(元記事)
発達障害のあるお子さんをお持ちの家庭にとって学校選びは非常に慎重になります。「公立だといじめが心配…。でも受け入れてくれるのか…。」という心配を持つ家庭は非常に多いと思います。この記事は発達障害のある生徒を受け入れてくれるかどうかが分かるHPを作成したというニュースです。下のリンクから確認することが可能です。
しかし残念ながら、現在のところそのほとんどが「要問い合わせ」となっていてますので、ほぼ使い物になりません。まだまだこれから情報が増えてくるのかな思います。
ただ、学校現場で働く者として言えるのは、「ほとんどの学校は受け入れ可能」ということです。学校では、前情報なくそういう生徒はわんさかと入学してきます。特に偏差値帯が中〜低あたりのほぼ全員合格するような学校では、かなりの数になります。心配するなら学力面で合格できるかどうかを心配した方が良いでしょう。
発達障害・グレーゾーンの子どもたちの学校選びについては、こちらの記事もご参考にしてみてください。
発達障害・グレーゾーンの子どもたちの学校選び若手教員の授業を数値で評価へ 大阪市教委、子どもにはアンケート
大阪市教育委員会は4月から、若手教員の授業を数値で評価する事業を全市立小中学校で始める。元校長らが評価し、児童生徒にもアンケートで授業の「わかりやすさ」などを尋ねる。市教委によると、他の自治体で同様の取り組みは把握していないという。大阪市は今年度、全国学力調査の全科目の結果で全国平均を下回っており、主に若手教員らの授業を改善して学力の底上げにつなげたい考えだ。(元記事)
パンチの効いたニュースが飛び込んできました。子どもたちに授業についてのアンケートを取るという手法は授業改善や評価においてよくやられることですが、それを若手教員に絞って行うということですね。
記事によると、大阪の全国学力調査の結果が悪いのは、若手教員の授業力不足が原因かのような意味合いが非常に強いです。確かに、若手教員は経験が浅いため様々なケースで対応しきれないこともあるかもしれませんが、決して若手教員だけが授業力が低いわけではなく、中堅・ベテラン教員にも経験値だけで対応して、自ら学ぶ姿勢を失ってしまった人も多くいます。
また、元校長が評価するとありますが、この校長の実力も不明です。肩書きだけの方も残念ながらいて、若手教員の方が授業が上手いのではないかとも思ってしまいます。適正な評価がされるのか甚だ疑問ですね。
その元校長が20分間授業をし、これを50点として、その後若手教員が20分間授業をして100点満点でつけてもらうぐらいしないと公平ではありませんよね。もちろんこの元校長は全評価の基準となるので、全校を周ってもらいます。
あと、授業アンケートは結局子どもたちによる教員の人気投票で終わるケースが多いです。それに学校のレベルや集まる生徒層によっても振れ幅は非常に大きいです。「忖度できる生徒にどれだけ育成できるか」これにかかっていると言っても過言ではありません。
ちなみに、ホワイト私学の多くは授業アンケートなるものは一切ありません。公立やブラック私学ではよく行われていますので、アンケートによる効果が無いことは明白ですね。
私立「興国高校」の副校長らを書類送検 生徒が所持していた『大麻リキッド』を警察に提出せず“校内に隠した”疑い 副校長「学校を守るためだった」
生徒が所持していた大麻について、警察から提出を求められていたのにもかかわらず、学校内に隠し続けたとして、大阪の私立高校の副校長ら2人が2月18日に書類送検されたことが捜査関係者への取材で分かりました。証拠隠滅などの疑いが持たれているのは、大阪市天王寺区にある私立「興国高校」の副校長の男性(70)と生徒指導部長だった男性教諭(45)の2人です。この高校では大麻を所持していたなどとして男子生徒5人が摘発されていて、学校の捜索も行われました。捜査関係者によりますと、副校長らは警察から証拠品の提出を求められていましたが、去年10月から約2か月間、男子生徒が所持していた『大麻リキッド』1本を校内に隠し続けたということです。警察の調べに対し2人は容疑を認めていて、副校長は「学校を守るために大麻を隠した」などと話しているということです。警察は2月18日に2人を証拠隠滅などの疑いで書類送検しました。(元記事)
このブログでは個別の学校を名指しでネガティブなことを記事にすることはあまりないのですが、今回の事件はかなり大きな事件ですので、注意喚起の意味も込めて書きます。
まず先生方への注意喚起という意味で、校内で禁止薬物を発見した場合それを教員自身の机に入れるなど、一時的でも預かってはいけません。生徒の使用が発覚し、それを取り上げて保管することは罪に問われる可能性があります。発覚次第すぐに警察に通報しましょう。今回の件は隠蔽ですので若干話は異なりますが気をつけましょう。
次に、私立学校の隠蔽体質についてです。公立の学校の場合、生徒に関する事件も教員に関する事件もほとんどすぐに情報公開されるようになっています。そのため、公立は事件が多くて野蛮だと思われるかもしれませんが、私立学校でも事件は起こっています。それを公表しないだけです。
私の感覚では公立と私立では教員も生徒も同じ頻度で何らかの事件は起こっているという感覚です。しかし、私立学校は公表する必要がないので、メディアが報道でもしない限り外に漏れることはないのですね。
最後に、興国高校独自の事情についてです。私自身、大阪府で教員をするものとして、この高校のことはよく耳にします。最近になって急激に生徒数を増やしてきた学校で、生徒数が大阪では最大規模の超マンモス校です。
教員自身が大麻を使用した訳ではないのに、隠さなければならない理由は何でしょうか。その場で警察に報告していれば、その生徒の問題として処理できたのに、隠すことによって自分も罪に問われるリスクを負っています。おそらくこの教員もそのリスクを知った上で隠蔽したのでしょう。「学校を守るため」という供述ですが、自身が罪に問われるリスクと釣り合っているのでしょうか?裏に何らかの大きな力が働いていたのでは?と勘ぐってしまいますね。
結果として、興国高校のダメージは最小になったのではないでしょうか。2人の教員は生贄となってしまいましたが、2ヶ月間隠せたことにより、高校入試前の出願のタイミングで最悪の報道を回避し、合格者が確定したところで報道されるという奇跡のタイミングになりました。1年もすればほとぼりも冷めていることでしょうから、来年の入試にもあまり影響はないのではと思います。
このあたりも何か闇を感じてしまいますね。真実が明らかになることを願っています。