先輩が教員採用試験に落ち続けて、今年度教員ができないみたいなんです。なんかいい方法はないですか?
それなら私立学校の不定期採用を受けてみたらどうですか?
不定期採用っていうのがあるんですか?
正式名称ではないんですけど、私立学校の教員採用試験には春採用・秋採用・冬採用の3つがあって、これらは来年度の教員を確保するために行われます。不定期採用は今年度急に空いた穴を埋めるために行われる採用試験ですね。今回は、私立学校の教員採用試験(不定期採用)についてご紹介します。
まずは予備知識
大学生や私立をはじめて受験される方に気をつけてもらいたいのが、公立と私立での職名の違いです。それぞれサクッと説明しましょう。
・教諭:正規雇用でフルタイム
・常勤講師:教諭と同じ仕事をするが非正規雇用
・非常勤講師:授業だけを教える存在で非正規雇用
・専任教諭:正規雇用でフルタイム(=教諭)
・常勤講師:教諭と同じ仕事をするが非正規雇用
・非常勤講師:授業だけを教える存在で非正規雇用
職名はほぼ同じですが、その中身は微妙に違います。公立と私立の雇用形態による仕事や待遇の違いについて、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
私立学校の教員採用試験・不定期採用とは?
不定期採用とは私立学校で行われる教員採用試験のうち、特にシーズンが決まっておらず、いつ募集があるか分からない不定期の採用のことを言います。基本的に採用された年度から働き始めます。なぜ、不定期になるかというと、年度途中で教員に穴ができてしまったのを補充するためだからです。これには主に3つのパターンがあります。
- 前年度の募集がうまくいかず、教員数が不足の状態で今年度を迎えた。
- 教員が産休・育休に入ったため、その代わりが必要になった。
- 年度途中に教員の急な退職・休職があった。
②と③の休職の場合は、教員が戻ってくることが前提ですので、期限が決められた採用になります。それに対して、①と③の退職の場合は、そのまま継続して働ける可能性が高いですね。ただ、募集段階ではそのような事情を書いている学校は少ないので、こちらから判断することは難しいです。
なお、不定期採用の他には来年度の採用である、春採用(春〜夏に採用が決まる)や秋採用(秋に採用が決まる)、冬採用(冬に採用が決まる)があります。
それぞれの採用試験の目的と特徴
- 春採用:専任教諭の募集もあります。公立より先に優秀な人材を確保することが目的です。公立と同様かそれ以上のガッツリとした試験内容です。
- 秋採用:春採用では応募者が集まりづらい学校か、のんびりしている学校です。公立の後でやることにより、十分な応募者を確保するのが狙いです。ただ、優秀な人材は公立に取られているので、専任教諭の募集は少なく、ほぼ常勤講師です。公立並の内容の採用試験が行われます。
- 冬採用:秋採用でも集まらなかった、もしくは突発的な退職で来年度の人員を確保できない場合の募集です。他と比較して非常勤講師の割合が高くなりますが、学校も焦っているので採用率は高いです。専任募集はありません。試験内容もあっさりです。
- 不定期採用:4月になっても教員を確保できなかったり、教員の事故や病気、妊娠等で突如長期の空きが発生した場合など、学校としては予期せぬ採用です。常勤講師の割合もまあまあありますが任期は短めなことが多いです。専任募集はありません。こちらも試験内容はあっさりです。
不定期採用の試験内容
- 書類試験
- 筆記試験(教科 or 実技・適性検査・小論文)・模擬授業・教科面接
- 管理職面接(役員面接)
学校側も焦っていますので、短期決戦のところがほとんどです。そして、志願者数も少ないので結構あっさり決まることが多いですね。
書類試験
書類試験はどの学校でもほぼ確実に行われます。
ただ、他の春採用・秋採用・冬採用とは違い、書類試験はあっさりなところが多いですね。必要書類も必要最低限のものだけで、作文を要求されることも少なくなります。余程のことがない限り、通過率は非常に高いです。そして、先着順に次の試験に移行することも多いので、なるべく早く提出した方がいいです。
とりあえず出しましょう!出さないと始まりません!
筆記試験・模擬授業・教科面接
面接はほぼ必須ですが、筆記試験や模擬授業を省略する学校もあります。
特に筆記試験は省略されやすいですね。学校側としては、授業がさえ普通にやってくれれば良いと思っていますので、余程の高偏差値校でないかぎり、飛び抜けた筆記試験の結果は求めません。
模擬授業を行う場合は、模擬授業後にその内容を含めた面接を行うことが多くなります。模擬授業も専任募集でもないので、授業として成立していればOKと思っています。無難な過激でない授業で大丈夫で、リスクを負う必要は全くありません。春採用や秋採用のような「この人が欲しい!」と思われるような授業より、「この人なら大丈夫だろう」と思われる授業が大切です。不定期採用を行う学校はそれだけ人材難なのです。
面接は教科に関するものがほとんどです。また、期間短縮のため管理職もこの面接に入ることも多いです。その場合、この面接が最後になります。
何度も言いますが、授業が成立するのかというのが学校が気になるポイントです。そこさえクリアすれば、余程人格に問題がない限り大丈夫です。面接には教科の教員が加わりますが、基本的に味方です。今空いている穴を埋めているのは教科の教員ですので、一刻も早くその穴を埋めたいと思っています。管理職受けが良くなるような質問をしてくれることが多いですので、リラックスして臨みましょう。また、どの学年に穴が開いているのか、またコース制がある学校でしたらどのコースか、理科のように分野が分かれているのならどの科目かハッキリ分かっているので、かなり突っ込んだ質問(「〇〇レベルを目指す△年生に◇◇の範囲の指導はできるか?」など)をされることと思います。自分が指導できる範囲はしっかりと精査しておく必要がありますが、全く合致しなければ不採用になりますので気を付けましょう。最悪、採用が決まってから勉強すればいいです。
くれぐれも過激なことは言わないでください!不定期採用をする学校はできるだけリスクを回避したいと思っています。
管理職面接(役員面接)
教科面接で管理職が加わる場合は省略されますし、不定期採用には管理職が一切加わらない学校もあります。
管理職面接を単独でやる場合は、この段階で採用はほぼ確定的です。管理職が教科で推薦された人物に会い、最終承認をする場です。ここでも大切なのはリスクの少なさです。管理職に「この人で大丈夫か!?」と思われてしまうと雲行きが怪しくなりますので、「この人になら授業を任せても大丈夫だろう」と思われるような受け答えを心掛けましょう。
なお、学校法人が大きい場合は役員面接をすることもありますが、非常に稀です。やるとしても採用が決まった段階で儀式的に行うか、働き始めてから面談という形でやることがほとんどです。
不定期採用の注意点
- 試験日程は非常にタイト
- 募集期間は「決まり次第終了」
- 公立の講師登録との併願もOK
この3点について詳しく見ていきましょう。
試験日程は非常にタイト
不定期採用は今空いている教員の穴を埋めなければならないので、学校側もかなり急いでいます。そのため、より早く教員を確保するために試験日程はタイトになっています。書類選考の結果を学校側から電話連絡があり、その場ですぐに面接の日程を調整するということもあります。
試験が一気に進んでいき、準備の時間はあまり取れませんので気を付けたいところです。さすがに面接や模擬授業の準備を全くなしというのは問題があるので、なんとか時間を調整して準備しましょう。
募集期間は「決まり次第終了」
不定期採用は基本的に、募集期間に「決まり次第終了」と書かれています。
同時に応募書類が届かない限り、先着順で選考へと入っていくことが多いです。ということは、早い者勝ちです。どれだけ優秀な人でも、応募が締め切られてしまったら採用されません。不定期採用を行う学校に興味があれば、なるべく早く応募するようにしましょう。
公立の講師登録との併願もOK
来年度の採用となる春採用・秋採用・冬採用とは違い、今年度の採用となる不定期採用。採用が決まれば即就職となりますので、公立の講師登録(今年度)と併願してもOKです。私立学校の今年度採用の場合、「あなたの学校で働かせてください!」とこちらから声をかけるスタイルですが、公立学校の今年度採用の場合は「うちの学校で働きませんか?」とアプローチをかけてくれます。ハッキリ言ってめちゃくちゃ楽です。
ただ、公立の講師登録のみだとお声がかからないと一向に進展しませんので、自分から動ける私立と併行して進めることをオススメします。なお、どちらかが決まれば片方はストップさせることをお忘れなく!
私も年度途中に講師登録をしたときは、私立より先に公立の方から声がかかりました。しかも大阪府内で有数の超進学校から。可能性を広げる意味でも併願をオススメしています。
最後に
今回は私立学校の不定期採用についてご紹介しました。不定期採用は学校側も予期せぬ採用ですので、リスクを極力回避した選考を心掛けています。もし不定期採用を利用される場合は「私は大丈夫ですよー。ちゃんと仕事こなしますよー。」とアピールしてもらえると採用側も安心です。採用率は結構高いので、ぜひ私立学校も候補に入れてみてください!